第16話

《マスターキーLV1》

《不眠LV1》

《断食LV1》

《金剛力LV6》

《魅力LV8》

《健康体LV8》

《知力LV3》

《完全再生LV4》

《根気LV4》

《体力LV7》

《高速LV9》

《剣術LV5》


――――――――――――――――――――


今のスキルはこんな感じだ。不眠や断食などはさっきも言った通り、ショートスリープや少食が昇格した物だ。LVの表記はあるが、どうやってあげるのかは分からない。食べなかったり寝なかったりするのが当たり前になってしまったからやりようが無い。

剣術は読んで字のごとく剣を操る術が身に付くスキルだ。剣を素振りしながら箱を開けていたら手に入った。このスキルの効果なのか、ゴブリンを倒す時にどうやって斬ればいいのか体で覚えているような感覚になる。おかげでゴブリンとの戦いがさらに楽になった。


さて、スキルの紹介はこれくらいにしよう。

俺はこれからホテル街に行こうと思う。何故かと言うと、ここ数日でゴブリンの数が急増したからだ。元々は一~二体が普通だったのだが、最近は四~五体程のゴブリンが出現するようになった。1回や2回だったら偶然で済むのだが、今はもうずっとこの調子なのだ。今の俺は全然楽勝で倒せているが、この量のゴブリンがホテル街を襲えば、戦闘スキルを持っていない人達にとっては十分脅威だ。別にそう言った人達を助けたい訳では無いが、俺が強くなってもそれを褒めてくれたり崇めてくれたり尊敬したりしてくれる人が居なくなってしまうと意味が無い。

俺にとって強くなりたい理由はそれなんだ。

本当に仕方が無くだが助けに行こう。


そもそも助けがいるほど困っているかも分からないのだが、俺はそんな事も気にもとめず、ただヒーローになることを憧れて意気揚々とホテル街に向かった。





俺はこれから起こるかもしれない俺が颯爽とホテル街の住民たちを助ける未来を思い浮かべウキウキでホテル街へと向かったのだが、俺の目に入ったのはこの前来た時から何ら変わりのないホテル街だった。

うん。よく考えたらそうだよな。ここには陽夏みたいな強い戦闘スキルを持った人達が集まる防衛者組合があるんだもんな。そう簡単に落ちるとは思えない。

少し落ち込む俺だったが、何もしないで帰るのもなんなので陽夏に会ってから帰ることにした。

とりあえず防衛者組合に行くか。

俺はとぼとぼとした足取りで防衛者組合へと向かった。



「……………………。」


俺は早速ここに来て後悔している。それに自分の無能さに怒っている。

何が起こっているかと言うと、あまりの人の多さに動けなくなっているのだ。しかも殆どの人は俗に言うイケおじと言う人達や、ヤンチャな兄ちゃんみたいな人達ばかりで正直1人いるだけでも怖いような人達だ。そんな人達が大量に居るのだ。

気絶して無いだけ良い方だと思う。


よし、帰ろう。


俺は声には出さずに心の中でそう呟きくるりと後ろを向き扉から出ようとする。


そこにはスキンヘッドのいかにもヤのつく職業についていそうなおっさんが居た。


ギギギギと言う効果音が似合うような壊れたからくり人形のような動きでもう一度くるりと後ろを向き、俺は比較的人が少なそうな廊下へと歩いていった。

もう無理もう無理。あんな所に居たら死んじゃう! というか殺されちゃうよ! 無理無理無理ー!


人が居なくなった事を確認した上で俺はへなへなと壁へともたれかかった。


「はぁぁーーー。怖かったぁ!!」


俺は思わず叫んだ。もう俺はここには来ない。これは決定事項だ。本当は陽夏に会ってから帰ろうと思っていたが、もういい。帰る。帰るもん。

そうやって俺が荒ぶった心を落ち着かせていると。


ガチャッ


体が支えを失い後ろに倒れる。

そのせいで俺はその人物と目を合わせてしまった。


「わぉ、イケメンじゃないか。」


彼…………? はそう言うと物珍しそうに俺の事をジロジロと眺めてきた。

俺を眺めてくるそいつは中性的な顔立ちで緑色の髪に眼鏡をかけた子供のような人だった。ただ、子供とは思えない程の美貌を備えていたおかげか、俺はその人が外見と年齢が違う人だということに気がついた。


「えっと、あなたは?」


俺はそのままの体勢でそう問いかけた。


「ふっ、それはこっちのセリフだよ。というか防衛者組合に居るのに僕の事を知らないなんてめずらしいひともいるものだ。まぁ、知らないなら仕方ない。僕の名前は八百コナーやももこなーこの防衛者組合ギルドのマスターを務めさせてもらっている者だよ。」


マスター? それってまさか。


「簡単に言えばここのトップって事ですか?」

「うん。まぁ、簡単に言えばそうだね。」

「ふぇっ。」


まてまて、整理しよう。この人がここのトップって事は、今俺がやってる事ってのはそのトップの人に対して奇行を働いているというわけか。


俺はコナー……さん? の顔を眺める。

彼は不思議そうな顔をしてニコリと微笑んだ。

綺麗な人だ。子供っぽい体型だが、それをものともしないようなカリスマを感じさせる。


ううむ。


いよいよ俺はやばい事をしているのか???

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