第17話
俺の脳が段々と正常に作動し始めて、やばい事をしていることに気づいてからの俺の行動は速かった。
流れる様な全力の土下座だ。
土下座は特にしなれている訳ではないが、それでもそんな事をやってしまえる程俺はやばい事やったと思っていた。
だって世界がこんな事になっている中で、それに対応することの出来る強い力を持った人達のトップの座に着いている人だ。弱いわけが無い。
下手すれば俺は不敬罪か何かでここで死刑にされ、異論は認めないみたいな感じになってしまうかもしれない。
それなら出来るだけ相手の怒りを鎮めるためにも土下座が最適解だと俺は判断したわけだ。
「ブファッ。」
コナーさんは思いっきり吹き出した。
「ちょっと、何やってるの! はーっ、面白すぎ!」
コナーさんは爆笑していた。良かった。怒ってはいないようだ。というか、なんで笑っているのだろうか。別に面白いことはしていないのだがな。
「はぁ、別に怒ってないっからさ、だからっ、起き上がってっよっ。」
「良いんですか?」
「いいよいいよ。ずっとその体勢だったら笑っちゃって喋れないからっ。」
俺はコナーさんに言われた通りに起き上がる。
コナーさんは思っていたよりも小さく、コナーさんを見る為には自然と少し見下す様な体勢になってしまう。
まって、これって失礼なのか!? そういった目上の人と話す経験などまず無かったし、あったとしても大体が身長が俺よりも上の人だったからこんな経験初めてだ。
俺は考え抜いた末、少し屈んでコナーさんよりも少ししたあたりの身長に合わせた。これで見下す感じにはならないし、失礼じゃないはず。
「ええっと、君のさっきの行動とかから考える限り君の方が身長が高くて自然と見下す様な感じになるからそれだと失礼だから屈んだんだと思うんだけど、それって逆に僕の事をチビって言ってるような事になるって気づいてる?」
コナーさんは呆れた様子でそう言った。
そ、そうか! 確かにそうだ。畜生、またやっちまった。仕方が無い。また土下座を……………!
「わぁー! やめてやめて! もう良いから! 別に怒ってないよ!」
「すいません!」
「もうわかったから。で、なんの用でここに来たんだい? マスターの僕のところに来るくらいだから何かあったんじゃないのか?」
そうだ、忘れていたが陽夏に会おうと思っていたんだった。
「陽夏って人を知っていますか? 今から会おうと思って居たのですが人の波に呑まれてここまで流れ着いてしまったのです。だからその、別にそこまで大事な事でも無いんです。すいません。」
「あぁ、そうなんだ。てっきりスキルの鑑定を頼みに来たのだと思ったのだけどな。あそこの奴らは適当だから場所だけ伝えて後は放置みたいな事を良くするんだよ。」
あそことは多分俺がゴブリンを初めて殺したあの場所だろう。そしてスキルの鑑定という言葉に俺はドキリとした。俺は多分他の人には無いくらいの大量のスキルを持っている。それを見られると俺の箱の秘密までバレてしまうかもしれない。絶対に防がなくては。
そこで俺がとった行動は。
「では、僕はこの辺で帰りますね!」
逃げるだ!
こういう時は逃げるのが1番! どうせ俺は家に籠るんだ。逃げてしまえばどうとでもなる。
だが、俺の目論見は外れてしまった。
「ちょっと待ちなよ、君はスキルを獲得してないのかい? 君のような子を鑑定した記憶が無いんだ。君みたいに若くていい体をしているイケメンなんてそうそう居ないし、間違えないと思うんだけど。獲得して無いならついでに獲得してみようよ。君みたいな若い子は大歓迎だからね!」
まずいぞ。これは絶対に鑑定される流れだ。なんとしてでも回避しなくては。
「ええっと、ちょっと急いでいて…………。」
「え? そんなに急いでいるのに陽夏ちゃんに会おうとしていたの?」
「えっと、その。」
やばい。そこまで考えてなかった。急いで考えなくては!
「ほぅ、その反応。急いでいると言うのは嘘だね? そんなに鑑定されるのが嫌なのか、それとも今から僕に言えないようなことでもしようと言うのか…………。」
「いやっ! そんなことは!」
コナーさんの眼が紅く光る。まずい!
「その反応も怪しいね。どれどれ君のスキルは…………。ふぇっ!?」
コナーさんは間の抜けた表情で固まってしまった。これは、鑑定されてしまったな。まずい、怪しまれるか?
コナーさんはワナワナと震えている。
「あのっ! 誤解で「素晴らしい人材だぁ!」えっ?」
コナーさんは目を光らせて俺の方を見た。
「ちょっと! 君はなんでそんなに強いんだい!? はぁ! はぁ! やばいよ! 興奮がおさまらない! 胸がドキドキする! 何なの!? これって恋!?」
「ちょ、何言って。」
俺が一歩後ずさると彼は物凄く焦った表情になった。ちょっと可愛い
「まってよ! 逃げるの!? やめてよ! 逃げないで! くっ、こうなったら!」
ドンッ
物凄い勢いのタックルだ。今の俺みたいにかなりの筋力がなければぶっ飛んでるレベルだ。
そんなタックルを食らった俺はその場に留まることが出来るわけもなく、押し倒されてしまった。
「ちょっと、やめてください!」
俺は俺を拘束するその小さな身体を退かそうとするが、その顔を見てそんな気はなくなってしまった。
何故なら、その顔は今にも泣きそうな顔だったからだ。
「お願い、逃げないで。君みたいな素晴らしい人材は僕、見たことがないんだ! だから、お願い!」
「ヴッ。」
もう、そんな顔されたら断れ無いじゃないか。
「分かりましたから。だから、もう泣かないでください。」
「本当に? 嘘じゃない?」
「はっ、はい。」
「やった、やったー!」
コナーさんは満面の笑みを浮かべた。
この人可愛すぎないか? ショタコンの人の気持ちが分かりそうだ。
「やったー!晴輝君大好き! んー、すりすりー。」
「ちょ、恥ずかしいですって!」
コナーさんは俺に抱きついて顔を擦り付けてくる。
もう、俺はこの人が天使に見えてきたよ!?
そうして、コナーさんのその行動はコナーさんの頭が冷えるまでの数十分間続いたのであった。
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