第33話 幕間 ロプトルの行動原理
ごめんなさい。
アタシはそうやって正面切って真っすぐに謝った事が無い。
それは謝るのが恥ずかしいとか、自分のしたことがいけないと自覚してないとかという訳ではない。無論、悪いことは悪い、やっちゃいけないことをしたという自覚がある上での行動ではある。
いつだって、怒られれば笑ってごまかして、うやむやにすれば万事解決。ミカエも謝ることを深くは追及しない。
そうやって、アタシはどんなに悪さを、イタズラを積み重ねても決して謝りはしない。
という、アタシの所業をこうやって言葉にして表せば、なるほど、アタシは最低なクズ野郎なのだろう。
他人の嫌がることをして、それで居て反省などかけらもしなければ、また悪さを繰り返して叱られて、それでもまた繰り返す。
悪戯の常習犯。
ずるい? 最低? 見損なった? クズ?
仮にそう思ってくれるのであればそう思って欲しい。
でも、同時にこうも思われたくはない。
アタシだって後悔や慚愧が無いわけではない。言った通りそれがダメなことだという自覚はあるのだ。それを抱いてするイタズラになにも感じないほどアタシは強くはなく、ことを起こすたびに心の中でどこかごめんなさいと謝り続けているのだから。
けれども、繰り返す。何度も何度も、教会のみんなや、ミカエに対する嫌がらせは止めない。
だというのに、何故ミカエはアタシのことを嫌ってくれないのだろう。
何度イタズラしても、怒ってはくるけれども、それはその場限りでアタシを嫌う素振りは一切見せない。
なんで、どうして?
アタシは居るだけで周りの人を不幸にするのに。
アタシが居る目の前で友達がコケて膝を擦りむいた。
アタシが買い物をしたら、その横で盗みをする者がいた。
アタシが輪の中に入ったら雨が降ってきた。
アタシが居たからお父さんとお母さんは死んだ。
すべてアタシが居るから起きる不幸で、いなければ起きなかった事。
アタシの存在は呪い。それは夢の世界で聖器(アタシ)自身が示した事実で、近づくだけでみんな不幸になる。
だから、ミカエは、うんん、それ以外の教会のみんなもアタシに近づかない方がいいと思った。
ゆえにイタズラを繰り返す。
ミカエもみんなもアタシから離れるように、避けられることには慣れている。という考えそのもの事態も、ああ――
見方を変えればきっとこれすらも呪いの類なのだろう。
近づけば不幸が起きるし、近づこうとすればイタズラをされて不幸になる。
周りに不幸が起きないようにと思って、アタシに近づかないようにして、でもそれすらも他人からしてみれば不幸なんだ。
結局、近づいた時点でダメなんだろう。
だというのに、それでもみんなアタシから離れてくれない。むしろいっそう今まで以上に近づいてくる。
どんなにイタズラをしても、怒るけれども、最後には笑って一緒にいてくれる。
きっと、こんな幸せなことは外にないのだろう。卑屈なアタシから離れず、ずっと一緒にいてくれるみんな。
正直嬉しいよ。楽しいよ。
けれど、それが奇怪で怖くてたまらない。どんなことをしても一緒に居てくれる。何をしても、嫌いにはなってくれない。まるで記憶が抜け落ちたように何もなかったかのように、イタズラのことには怒った次には誰も触れない。
それどころか、より付きまとってくる。
みんなはアタシのこと恨んでいないの? 憎んでいないの?
もしかしたら、なにか狙いがあるのかも? それとも裏では何か悪口を言っているのかも。などという不信感はイタズラをすればするほど絶え間なく膨らむ。
けれども、やはりそれでも嬉しいのだ。みんなが居てくれる。ミカエが居てくれる。叱ってくれるそれすらも、好きだと言われているようで、アタシのイタズラは加速する。
どこまでならばミカエは許してくれるのだろうか。嫌いにならないでいてくれるのだろうか。
どんなにイタズラをしても関わりを遮断しないどころか、すればするほどミカエとの関わりが強くなり、どれほど自分を好いているのかと、好奇心となって、イタズラをして不幸を振りまいて試す。
だからアタシの存在は呪いだ。切ろうとしても切れない繋がりに甘んじて、絡まって遊ぶように、こんなことを考えてやっている時点で相手を不幸にする天邪鬼な存在でしかない。
そんな迷惑なヤツなんだ。
ただ――
アタシはミカエが好きだからこそアタシから離れて欲しいのであって、嫌いでは、嫌いでは、決してない。
そう、それだけはどんな呪いが襲い掛かろうと、例え関係が悪くなって繋がりが切れたとしても変わらないと断言できる。
だって、アタシは彼女のことが大好きだから。
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