第22話 これが文明の力というものか……!
銛を装備したことで、俺は急に色々な生物に勝てるようになった。殻の分厚いちょっと大きめのカニやエビ、それからタコなども銛で突けば余裕で狩ることができる。
いや、今までも無理をすれば勝てたとは思うけど、ちょっと面倒臭い相手だったんだよね。それが簡単に狩れるようになったのだから、素晴らしきは文明の利器である。
まあ、これを造ったのは人間じゃなくてサハギンなんだが。
やっぱり色々な道具を造れて、色々な道具を使えるってことは、自然界で生きるのにだいぶ大きなアドバンテージなんだと再確認した。できれば今生も人間に転生したかったぜ……。
ともかく。
今まで食べれなかったタコなどを食しつつ、俺は探索を続けた。
んで、その途中、陸地の水没しているところに大きな横穴みたいなのが開いているのを見つけてしまったのだ。
気になった俺は中には入らず、少々離れた場所から覗いてみることにした。「空間識別」の外縁に「座標」を設置し、また「空間識別」を展開していく、あのやり方である。外洋で見かけた帆船を観察した時と同じ方法だ。
それで洞窟の奥を確認してみたところ、2、30メートル進んだところで海底トンネルは途切れていた。しかし、その行き止まりの上の方に空気のある空間が続いていたのである。
何かと言えば、洞窟だ。
結構広くて複雑そうな洞窟が、そこには広がっていたのだった。
それだけなら何でもないことなのだが、その洞窟の中には数えるのも馬鹿馬鹿しいほどのサハギンどもが、うじゃうじゃと繁殖していた。
どうやら、この洞窟はサハギンたちの巣であるらしい。
全貌を確認するには、MPをどれくらい使うことになるのか、ちょっと想像もつかない。だから調査はいずれ気が向いた時にするとして、俺は探索の続きに戻った。
まずはこの陸地が島なのか大陸なのかを確認してしまいたい。
それにサハギンを倒せるようになったとはいえ、何体かの群で来られたら敵わない。目をつけられる前に触手式高速移動で、その場からオサラバだ。
幸い、この日は他のサハギンとエンカウントすることはなかった。
転生二十三日目。
昨日から引き続き、探索範囲はやはり歪な円を描き続けている。そして今のペースであれば、今日中に探索開始地点まで戻ることができるだろう。ここが島であれば。
ともかく探索は順調に進んだ。サハギンのような厄介な敵と遭遇することもなく、あと少しで探索を終えられそうになった時――、
(ぬぅうんッ!? この気配は!!)
「空間識別」の領域内で接近反応を検知!
敵影――海亀! こちら目指して一直線に泳いでくる海亀の姿を確認した。
【名前】なし
【種族】カワード・シータートル
【レベル】7
『鑑定』の結果はこれ。
どうやら以前にも倒した、カワード・シータートルの別個体とエンカウントしてしまったらしい。
だが、俺はもはや以前の俺ではないのだよ!!
今更海亀ごときを恐れる俺ではないわ!!
俺は逃げずに真正面から海亀野郎を待ち受ける。そして奴が何の警戒感もなく、こちらを丸呑みにしようと口を開けた瞬間、前方に「空間障壁」を展開!
「――――ッ!?!?!?」
奴は間抜けにも障壁に頭からぶつかった。
直後、俺は障壁を迂回するように触手を伸ばし、奴の前肢を甲羅ごとグルグル巻きにして拘束する。
俺自身のレベルアップに加え、スキルが強化された今、奴を拘束するのは容易いことだった。銛を保持している触手が4本あるが、全ての触手を拘束に回さないでも、だいぶ余裕があった。
これならむしろ、もう少し拘束用の触手を減らしても大丈夫なくらいだ。
ともかく、これで海亀野郎はろくに動くこともできなくなった。まさにまな板の上の鯉状態だ。
俺は正面に展開した「空間障壁」を消去し、銛を保持する触手に魔力を注いでいく。『触手術』『鞭術』『魔闘術』『魔力操作』のスキルを並列起動し、最大強化。その上で、銛を勢い良く突き出した。
狙うは海亀野郎の頭部。
くらえッ、さみだれづき!!
――――程なく、カワード・シータートルは息絶え、俺はレベルが一つ上がった。現在レベルは18になる。
しかし、『天敵打倒』の称号は効果を発揮しなかったので、スキルレベルはどれも上がらなかった。やはり倒したことがある種族は対象外となるようだ。
だがまあ、そんなことより。
(くっくっくっ……! まさかここまで楽に勝てるとはな……!!)
喜びが抑えきれないぜ。
武器が手に入ったことと「空間障壁」が使えるようになったことが大きな要因とはいえ、苦戦することもないスマートな戦闘だった。
最初は逃げるしかなかった海亀野郎に、こうも簡単に勝てるようになったかと、感慨深い思いを抱いてしまう。俺ってば、かなり強くなったんじゃない?
いや、調子に乗るつもりはないけどね。何しろ外洋には水竜やシャーク様をはじめとして、ピラニアどものような化け物がいるんだから。
流石に今の俺でも、彼らに勝てるとは思えないし。
しかし、とはいえ、だ。
水深の浅い穏やかな海であれば、かなり安全に暮らすことができるようになったのではあるまいか?
その点だけは素直に嬉しいし、喜んでも良いだろう。
俺は喰うことができない海亀の亡骸を放置して、軽やかに探索を再開した。
んで。
その日の内に予定通り探索を終えることができたんだけど、やっぱりここは大陸ではなく、少し大きめの島だったみたいだ。
海岸線沿いにぐるっと回ってみたが、船や港や桟橋などの人工物は見つからなかった。明日以降、徐々に島の内部に「空間識別」を飛ばしてみようと思うのだが、何となく人は住んでいなそうな雰囲気である。
ある程度探索して人がいなかったら、サハギンどもの洞窟でも調べてみようかな?
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