同じ痛み

「お姉ちゃん!!」

「お姉ちゃん……」

 二人の全く同じ姿かたちをした人間が、大勢の目の前で、互いに互いの潔白を説明している。ザドがロウルとピローに呼びかける

「あなたたちの力は使えないの?」

「ダメです、先ほどつかったばかりでまだ“ESP値”が回復していません」

「土壇場でつかってたの?」

「あなたたちがネッドや仲間をつれてくる可能性や、もしものことを考えて……」

「くっ……」

 もしロウルの能力をつかえばどちらが偽物かわかり、もし、ピローの能力を使えばRRAIを捕獲することができる。

「あなたたちの力、回復にどのくらいかかるの?」

「私たち両方とも、3時間は……」

 自体は切迫していた。RRAIが何をするかわからない以上、素早く彼女を捕獲するしかない。ザドは覚悟して、自分がRRAIと妹か判断をし、もし間違えた場合にも、どうにかなるように考えた。

「アデル、私の命令する方をクラウンズの非殺傷弾で撃って、必ず急所ははずして怪我をさせる程度にしてね」

「わ……わかった」


 するとその時を見計らっていたかのように、二人の“レア”のうち、前方にでるAが、ザドに呼びかける。

「お姉ちゃん、私たちは一心同体、あなたの痛みは私の痛み、私たちは互いをわかっているわよね?」

 すると次にその後方に控えるBが胸に手を当ててうったえる。

「そんなの私だっていえるわ、それでもお姉ちゃんは私の事一番に考えてくれるけれど!」

「お姉ちゃん、こいつは、いいえ、私たち二人とも実は心の中で、お姉ちゃんの事うらんでいた、そうよねRRAI」

 次にAとBは互いに罵り合いを始める。

「黙りなさいよRRAI!!お姉ちゃん、私はあの事をうらんでいないわ」

 BがAにつかみかかる。Aも同じ構図でつかみかかるので、まったく同じしぐさにザドは頭を抱えた。

「嘘、私たちはうらんでいる」

「いじめのこと?それとも“楽園”に一人だったこと?」

「両方よ」

 Aがささやくように笑う。Bは、観念したようにため息をついた。

「恨んでいるわ、あなたは私だもの、すべて見透かしている」

 ピローが思わず後方から声をもらす。

「どっちがRRAIなの……」

 ザドの目は踊っていた。判断材料が少なすぎた。

「あっ」

 ザドは大きな声をあげた。アデルが思わず尋ねる。

「どうした?」

「いえ、ひとつだけとっておきの確認方法があるわ、けれど、もう少しまって、もし失敗したら、失敗しても大丈夫なように……」

「何を焦っているんだ?」

 アデルが落ち着かせるようにささやくと、ザドが答える。

「彼女が……RRAIが本当に私たちのような“予知”能力があるのなら、すべてが無駄なような気がして……」

「……大丈夫だ」

「え?」

「責任は俺ももとう、ひとまず失敗しても、どちらかを保護し、どちらかを遠ざける口実にはなるだろう」

 内心すさまじい焦りを抱えつつも、アデルはそうつぶやいた。

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