危機

 タブレット型端末から目を離して目線を前に向けたザドとレアは、密集するように、自分たちをめがけてわらわらとわいてくる野良アンドロイドの影をみた。レアが不安によって声をあげる。

「地上でこんなにアンドロイドが密集して同じ目的のために集まるなんて考えられない、きっと何かの力がはたらいて」

ザドは、口に手を当てて少し考えて答えをだした。

「ディリア・リード、あるいは私たちの敵なら、やりうることだわ」

「お姉ちゃん……日本支部で何をみたの」

 レアがそれを言い終えるより早く、ザドはアンドロイドの中の一体がレアの死角、倒壊した家屋のがれきの上からとびあがって襲ってくる瞬間がみえた。

「レア!!危ない!!」

 思わずザドはレアをつきとばし、おかげでレアは敵の攻撃をかわすことができた。アンドロイドは、カマキリのカマのような形状の腕をもっており、地面につきさしたそれがぬけずもがいていたので、ザドは無遠慮にその頭部を蹴りで破壊した。

「フンッ」

《ズドオ!!!》

あっけなく頭部を破壊され、胴体と四肢と関節は力なくあちこちへまがり首から地面にひれふして、そのまま動かなくなった。すると一瞬群れはひるんだかのように見えた。


 だがしばらくすると、まるでそれぞれの個体が話し合いでもしているかのうようにお互い向き合い小さな鳴き声をあげたかとおもうと、次はまるで部隊をくむようにいくつかのグループがまとまって、ザドとレアにむかってきた。

「レア……こいつら普通じゃない、ここまで統率が取れた動きをする野良なんて聞いた事がない、とりあえずにげよう」

「うん、お姉ちゃん」

 そう言葉をかわし、なんとか群れの攻撃を、2、3度かわした後で、ザドがなんと敵の攻撃をいなしたりかわしたりする中で、一方のレアは頭をめぐらせたり、タブレット端末のセンサーをみたりして逃げ場を探っていた。その中で、どうやらいつもは危険な地下に、地上に野良がつどっているためか、野良アンドロイドの痕跡がない事がわかった。

 (なんとか地下に逃げる方法はないか……)

 そんなことを考えていると、レアは、地上のある地点にて黒い人影、ただ黒いだけではなく、存在自体がまるで影からうまれたまるで影が人を形づくったかのようなものをみて、一瞬あっけにとられていると、その影は足さえもうごかず、スススーッと移動して、あるがれきが折り重なる地点の前に移動した。端末を操作して、地形を調べると、どうやらその場所は地面が倒壊して地下への入り口となっているようだった。

「お姉ちゃん!!地下への入り口がみつかったよ」

「本当か!!」

「黒い影が教えてくれたの、調べたけど地下にアンドロイドの痕跡はほとんどない、いまは地下のルートが安全かも!!」

「黒い影!!?」

 ザドは、日本支部の地下での出来事を思い出し、少しためらった。だが今危険な状況にあることにかわりはなく、迷っている暇はなかった。

「つられるなら、つられてみるか!」

「!?」

 そう叫ぶと、レアとザドは地下への道を急いだ。


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