死の合意
ザドとレアが、出発の準備をしている。必要最低限の物資をそろえ、与えられた自室で作業をしている。あるとき、ザドが真後ろに気配を感じて振り返る。そこには腕をくんで自分の作業をみているレアがいた。
「……」
「お姉ちゃん」
「どうした?」
するとレアは組んでいた腕をほどき、だらんとして少し前にあゆみ、話を始める。
「もしもの時はお姉ちゃんがいきのこって」
「え?」
そういえばレアには、RRAIがザドに化けていることを言っていなかったことを思い出し、ザドはなんとかその場をとりつくろおうと思考を巡らす。
「お姉ちゃん、お姉ちゃんはいつも私のために、私のことを最優先にかんがてくれていた」
「何よ、いきなり」
「それはいいのよ、でも私は、お姉ちゃんが本気をだせばもっと素晴らしい能力が使えるし、もっと自由な選択ができると信じてるの」
「あなたがいたからよ、レア、すべてあなたのおかげ」
「それよ」
そういうとレアは、ベッドに手をたたくようにして、声をはりあげる。
「あなたは私の事を優先してばかりで、本当は、自分のしたい事や、自分の好きな事をずっと避けてきた、人生で私のことを優先に考えない事はなかった」
「……それは、あなたがたった一人の家族だから」
「そう、だから」
レアは胸に手をあてて、ザドとそっくりの瞳と顏でまっすぐザドをみつめる。
「選べるかわからないけれど、RRAIが誰に化け、これから誰に化けるのかはわからないけれど、あなたが生き延びて」
あまりにも真剣にレアがそう語るのでザドは返すことばが見つからなかった。それに、ある意味ではそんな選択や決意など無意味な事をしっていた。それでも、だからこそ妹の言葉はうれしく胸に響いたのだ。RRAIはこのまま誰にも化けないのであれば自分に害を及ぼす、そのことをわかっているから、ザドは、なるべくネッドやRRAIから情報を引き出し、レアのこの先の未来がいいものであるようにと願い、行動をしてきた。そしてレアから今でた愛のあることば、ザドはそれが嘘の契約であることをしりながら、レアに回答したのだった。
「わかったわ、ありがとう」
一方ジュドーの部隊は指定した場所に集まり、RRAIを厳重に手かせ足かせをつけたまま、レアとザドが到来することを待っていた。ジュドーの目は、鋭く光り、何度もしてやられたザドに今度こそは一杯食わせてやろうと考えていた。
クラックス規約15条―クラックスは、人々を守るために命を賭せ。
その契約に違反した裏切りものを、部下であるロウルとピローとともに、どっしりと構えてまっていたのだった。
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