失態

 30日の正午、ネッドが急いで庭や表にいた皆をかきあつめた。

「通信を傍受したら、クラックス用の回線にあるものが……」

「何?」

 レアもザドもネッドにその詳細を聞こうとしたがネッドは

「見た方が早いから」

 とせかすだけだった。だれよりもいち早くその部屋にはいり、その光景を目にしたとき、レアはRRAIと遭遇したとき、去り際にRRAIが彼女にだけ耳打ちをしたことを思い出していた。

 「必ず、どちらかが不幸になるわ」


 暗いモニター室にRRAIを取り逃がした後、ジュドーだけが呼び出され、一階のモニター室に来るようにいわれた。ディリアとモニター越しに会話をする。

「彼女らをとりにがしました」

「……失敗続きだな」

「は、申し訳ございません」

「だが大きな違いがある、君は組織を裏切っていない、私が手をつくそう、君たちは“時がくるのをまて”その時に彼女らをおびき出す作戦がある、同時にRRAIもとらえられる、幸い彼女らはこちらへの通信は絶っているが、こちらの通信を捉える用意はあるようだ」

 ジュドーはモニターと横向きに向き合わせにそなえられたソファーにすわりながらこぶしをにぎる、ディリアを前に緊張気味だったが、少し気がかりな事があり、ジュドーはディリアに質問をぶつけた。

「ところで、リーダーのアデルからどうやって情報を探ったのか、教えていただけますか?」

「しりたいか?」

 その時仮面のしたにみえる彼の口元がにやりとひかり、仮面がすこしきらりと光った気がした。


 一方RRAIは、28日からまたもや、ネッドの拠点付近に出没していた。ネッドはそのことを理解してはいたが、いざとなれば拠点を移すといって、ひとまず30日が過ぎるまでザドとレアをかくまうつもりでいた。


 そのRRAIの痕跡と足取りをおって彼女を監視している人間たちがいた。ジュドー率いる特別グループだった。

ピロー「本当だ、ディリア代表の言う通りでしたね」

ジュドー「ああ」

 古い都市ビルの屋上から、ロウルの能力でRRAIの様子を検知しながらも、ここにあらずといった感じで、ジュドーがぼんやりと受け答えする。

ロウル「リーダー、リーダー……ジュドーリーダー!」

ジュドー「ああ、なんだ?」

ロウル「本当にこのまま30日のギリギリまで待つのですか?ディリアはRRAIが変化するリスクを考慮していないようにみえますが……」

ジュドー「ああ……」

 ジュドーは風に吹かれて、古びた都市と廃墟群、街を見下ろしながら、答えた。

ジュドー「だが、組織が間違えようが正しい事をしようが、ひとまずは命令に従わなければいけない、それが彼らと私たちの違いだ」

ピロー「……」

ロウル「……はあ」

 だがジュドーは迷っていた、このグループの中でもっとも迷いを抱いていた、彼女らを素直につかまえてもいいのかどうか、RRAIとは何なのか。それもこれも、あの日、ディリアがアデルにどうやって情報を聞き出すか尋ねたとき、ディリアの口から出た言葉のせいだった。


「どうやってアデルから情報を聞き出したんです?」

「“RRAIは嘘をついている、お前の彼女を助けるためだ”と脅しただけさ」


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