その日。
アデルが捕らわれてから数日後。ザドが日本支部に潜入する以前のこと。アデルは意識がもうろうとしながらも、ずいぶんあらがったのだが、ついに自白剤まで使われある事実を暴露した。
「彼は、RRAIの皮膚に追跡装置を埋め込んだ」
潜入を逃したあと、ディリアに呼び出されたジュドーは、ただそれだけを聞かされた。
「なぜ今までそれを黙っていたのですか?」
「必要な時に必要な仕事をしてもらうためだよ、君も“組織の結束”については思うところがあるだろう」
「それは……」
「君は私の不出来なせがれより数段優れているところがある、それはその冷徹なまでの冷静さだ」
支部のある部屋で、モニター越しにディリアと会話しながら、彼から下る命令のままに、彼、ジュドーは今RRAIとザド、レアを追い詰めようとしていた。
「では、“時がきた”という事ですね?」
「ああ、そろそろだ、君は容赦などする必要はない」
「……」
「もはや彼らは組織の敵だ、今まで君はずいぶんと“ハンデ”をかして彼女らにきをつかっていたようだがな」
ディリアから放たれたその言葉が、ジュドーの能力をかっての事、つまりザドの本当の力を知らずに飛び出したのか、それともジュドーの最近の失敗を見てプレッシャーをかけるためのものなのか、ジュドーには計り知れずにいた。
その命令が下ってから数日間、ジュドーは支部のピローとロウルの手助けをかり、RRAIの足取りをおっていた。しかし、彼女は常人では追いつけない速度で移動しつづけ、まったく疲れもしらず、日本の地形を知り尽くしているようで、東北区にとどまりつつ、まるで監視されていることに気が付いているように移動し続けていた。あるとき、ロウルが路地裏にて彼女の居場所をその能力で検知した。彼の能力の優れているところは、その空間、半径5キロ以内でRRAIが何をしているかが理解できる事だった。ジュドーはその特性を利用して、彼女の様子を探るように命令する。するとロウルから意外な答えが返ってきた。
「今、彼女は歌を歌っています」
「歌?RRAIが?侵略者にしては、崇高な能力だな」
ピローは何気なしにその言葉につけくわえた
「皮肉がお上手ですね、ジュドー様」
「は?」
「いえ、失礼でしたらすみません」
ギクシャクとしながらも、ピローとロウルに彼女の追跡を頼み、ジュドーはその反対の位置から彼女を挟む作戦にでた」
ある廃村にさしかかったころ、その作戦は決行された。
ロウルとピローがわざとらしく彼女をおいつめた瞬間に、ジュドーが目の前にあらわれ、彼女の注意をひく。その時、ピローの能力とジュドーの能力で彼女を完全に足止めし、捕獲する寸法だ。しかし、その作戦の途中で無線で、ロウルとピローから連絡が入る。
「民家に入ったまま動きません」
「なんだと?ここ数日動き続けていた彼女が?変だな」
「どうしますか?」
ジュドーは少し考えたあと、作戦を二人に伝えた。
しばらくの後。
「準備はいいか」
「ええ」
無線同士で民家の裏にロウル達、表からジュドーが責めることになった。ジュドーは危険を察知したため、ピローとジュドーの“能力のみ”で敵を追い詰めることに決めた。最初に責めるのはジュドー、そこでジュドーは巨大なつたを召喚し、正面突破し敵の狙いや動きをさぐる。
「いいか!いくぞ!!ピロー!!」
「はい、隊長!」
ジュドーは林にかくれながら、ポケットからツタをだし、前方に放り投げた。それに念力で力をこめると、ツタは急成長し、やがて民家の入り口にちかづいていき、ドアをけ破り中に入った。
「裏口、どうだ?」
ジュドーがよびかける。
「い、いえ!変化ありません」
「おかしいな、まあいい、ピロー、算段通り“能力”を使え」
「はい、隊長!!」
そういうとピローは、民家の裏手、崖上から額の前に両手の親指と人差し指でわっかをつくり、瞳をとじた。するとそのわっかの形から奇妙な黄緑色の光がはなたれ、やがてそれは民家へと向かい、民家全体を覆う魔法陣へと変化した。
「術をかけました、これで5分、対象はうごけません!」
「いいだろう、ドローンを潜入させる」
そうしてジュドーが自分のドローンを潜入させて中を確認する。ドローンは静かに窓から潜入したが、毒やトラップなどは検知できず、内部は静けさにつつまれていた。モニターを共有してみていたピローが思わずくちにする。
「いない?」
「まさか……」
確かにいくら探しても敵の姿はなく、ジュドーはいてもたってもいられず内部に潜入することにした。
「RRAI!!きさま!!」
正面きって表から潜入するジュドー、しかし、中は静けさにつつまれている、ジュドーは、追跡装置の場所を探る。すると、古びて朽ちた机の上に、血の塊と人間の皮膚らしきものがおかれていた。ジュドーが、あまりの事に言葉を失って膠着する。
「まさか、追跡装置を自分で外したというのか、あのナノテクノロジーの結晶を……」
しばらくするとピローとロウルも合流したがしばらく三人とも状況が呑み込めずにいた。
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