小さな異変。
30日の午前“これで終わる”とどこか安堵した気持ちのあったザドは、落ち着いて話せる時間もなかったので、その日は庭で、木の根元にすわり妹のレアとこれまでの事を話しあっていた。その時、彼女はRRAIとの交流からなる選択の正しさを妹に尋ねたのだった。
「組織を抜け出してよかったのかな……」
しずかな人工太陽と人工風にふかれて、なごやかな雰囲気の中で、つい本音らしき弱音がでる。
「やめてよお姉ちゃん、私はお姉ちゃんの事を信じてる、いまさらその選択が間違いだったなんて、私のこれまでの苦労やこの怪我の意味もなくなるわ」
「でも……」
「大丈夫、私はお姉ちゃんに憧れているのよ、そんなに暗い顔をしないで」
そういうレアが木陰にいるせいかいくらかくらい表情にみえたのは、見間違いだと思うようにした。
ザドは、彼女といろんな事を話すうちに、昨日の事もおもいだしていた。昨日の夜中、彼女はエリーによびだされて、彼女の部屋でいくらか忠告をうけたのだ。
「もしRRAIに何かあったら、あなたはどうする?」
「何かって、何が?約束はしてきたし、万が一にも……」
「わからないわ、確かに本部には隠し事がおおすぎる、あなたがみた“黒いRRAI”のようなものも気になるし」
そういわれるとザドは返す言葉もなかった。落ち着くためにエリーのベッドにひとつことわりをいれて腰かけた。
「そもそも、あなたは本当にRRAIを守る必要があったのかしら?あなたはただ隠れていればいいだけ、ネッドもネッドで怪しい、最初にRRAIのことをしっていたし、あなたの事を考えてRRAIに接触したかもわからない」
「エリー、何がいいたいの?」
「あなたは組織に戻るべきかも、今からでも、なるべくネッドもRRAIにも接触せず、あなたは組織の内部から組織を監視していくべきよ」
「けれど、RRAIは私に化けたのよ」
「え?」
エリーには、RRAIと話した内容のほとんどをその時話して聞かせた。
「……なるほど、じゃあ、あなたに化けている限り、あなたに不幸が訪れる可能性があるのね……そう単純でもないのね」
「いいえ、私はそれでもいいのよ」
「え?ていうと?」
「私はもともと“妹”に不幸がなければよかった、妹をまもる、そのためだけに組織をぬけだした、だからこのままRRAIが私にばけたまま私に何かしようともどうでもいいのよ……けれど」
「けれど?」
「エリー、もしも何かがあれば妹の事をお願い、もしかしたらここに残ることを選ぶかもしれない、ここをずいぶん気に入っているようだし……本部にもどっても、あなただけは信用するようにいっておくわ」
「……わかった、その辺は私にまかせて」
「明日、何事もなければいいけれど、もし何かあるのなら、って話よ……お願いね、彼女なしじゃ私はいきてこれなかったから、彼女さえ幸福に生きられるのなら、私には希望がある」
そういってザドは、エリーの部屋を去ったのだった。
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