黒いRRAI
ザドに化けたRRAIは、ザドと別れて以降しばらく自由な時間を満喫していたが“あるもの”を目撃して以降、またも、ネッドの拠点付近にあらわれ、その近辺を探るような動きをつづけていた。しかしその時RRAIにはすでに悪意はなく、ただその対象を探しているだけのようだった。顔を隠しながらも、様々なコロニーにわたりあるき、人々に“それ”の目撃情報を訪ねる。
「黒いRRAIを目撃しなかったか?」
「全身真っ黒い泥のような人影を見なかったか」
それは、ザドがクラックス・ガーディアインズ日本支部で目撃したものと同じあの奇妙な黒いRRAIについての情報だった。だが時にその顔―ザドの顏―の知名度を利用しながらも、捜索は思うようには進まなかった。コロニーや地下、時に地上をさまよいながらも彼女の想いはあるひとつの思考でみたされていた。
「あの男が現れたなら、この次元も同じ運命をたどる可能性がある、その前に“あの男”から有益な情報を聞き出さなければ」
RRAIは様々な次元を巡り歩きながら、達観した思いをもっていた。それは“同じ運命”そもそも“自分の運命”から逃れる方法はないのかどうか。その機転として考え続けていたのが“イレギュラー”な出来事だった。彼女は常に自分の次元と近しい次元に飛ばされ続け、変化しない現実に飽き飽きし“変化”を渇望し、その一点のみ―例えば30日を誰にも拘束されず平穏に過ごせるとか―“自由”を見出していた。もしそれがかなわないのならば“イレギュラー”を掴み、彼女自身の運命を変えるしかない、そう考えていたのだ。
29日の午後、RRAIはネッド拠点近くのある路地裏にて黒い男の目撃情報が集まり、まさかと思いそこへ足を延ばした。
「今度こそ“あいつ”を捕まえてその正体を見破ってやる……」
路地と路地をかきわけ、わずかな痕跡を探る。足あと、物色の後。それらを探っている間に、どこかから笑い声がひびいてきた。それが背後から響いた声だとさとって振り返った時にはすでに遅く、その人影は突き当りをまがり、どこかへ走り去っていく。
「あれは……黒い影?いいえ、あれは……」
RRAIには見覚えがあった。その姿は一度見かけたことがある。あれはクローラ。
RRAIは希望を見出せそうな気がした。というのもクローラの存在もこの次元に特有の“イレギュラー”であったから。
「まって!!クローラ!!」
その人影をおうRRAI。いくつか曲がり角を追ううちに、クローラは彼女の追う黒い影と一緒に動いているような錯覚に近いものを感じ、彼女は焦りはじめる。
「だめよ!!そいつと一緒にいちゃ!!」
彼女の体力がつきかけ、いよいよ追跡を諦めようとしたそのとき、すぐそばの曲がり角で、はっきりとその少女は足をとめた。
「こっちよ」
そういって、黒い影に手をひかれている様子をみせて、ゆっくりと路地裏を右に曲がった。
「はあ、はあ、はあ」
乱れた呼吸をととのえつつ、不規則に動く両足を何とか前へ前へと推し進める。その先にいたのは……。
ピロー「あ、本当に表れた」
ロウル「どういう事だ?」
ジュドー「……命令通りだったな……」
そこにいたのは、クラックス。ジュドーのグループだった。
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