自白。
クローラが去るとまた二人は話をつづけた。
「だまっていたの、私はあなたに化けたのは、私の存在を隠していたから」
「まさかとは思っていたけれど、もしかして、あなたは、異次元において私に近い人物だったの……」
「そうよ、私は他の存在に化けて、でも他の人間を殺せば、新しい30日を始めることができる、でも私はそうしない、なぜなら私の心残りは私自身だけなの、私は私の過去にまつわるものに決着をつけたいだけ、私が恨む人間しか恨まないし、愛する人間しか愛さない」
何もいわずにザドは海を見つめた。
「わかる?後悔したくないのよ」
「……」
ザドの肩をたたき、RRAIは、左頬の絆創膏をとった。
「みて、ザド」
ザドはそれを見て息をのんだ。左頬にホクロがなかった。それは妹と自分とを分ける唯一のシンボル、妹はその場所にホクロがあり自分にはない。
「私はね、あなたと同じように、異次元のあなたなの、異次元で私はあなただった、だからあなたにばけた、あなたも後悔しないようにね」
そういうと、手すりにひじをつけて、また海をみるザド。
「私は、別に後悔なんて、妹を守る事はきめているし、あなたに殺されても後悔はない」
RRAIも同じそぶりで海を見つめると話をつづけた。
「“彼”については?」
「彼って……」
ザドはしばらく考えて、あわてて手を胸の前でふって、左のRRAIをむいて、RRAIの推測を否定した。
「彼は何でもないわ、ただクラックスでの私の居場所をつくってくれたし、相談にのってくれたし、ただいいひと、尊敬している、ただそれだけよ」
「フフ」
RRAIはその様子をみて、笑った。
「あなたって不思議よね、RRAI、あなたみたいな“特殊個体”は見たことがないわ、ほかのRRAIは皆おびえていて、死ぬことだけを恐れていたの」
「なんとなくこうなることが私にはわかっていたもの、だって私は異次元のあなた、いくつもの次元を渡り歩いて、でもどの次元の“私”も似た考えをしていたし、似た過去をもっていたわ、あなたが後悔しない選択をすれば、私は私の30日を生きることができるし、あなたもあなたの人生を選択して、私はきっとそうすることで満足する、そうすれば何もしないから、もしその日がきたら、私はこの腕のリングを渡すわ」
そういうとRRAIは左腕をみせた。ESPリング、ザドの首にあるのと同じ形状をしたものだった。
「でも、どうすれば?」
「心残りのある彼を助けなさい、彼が自分の想いに反して貴女をうらぎるまえに」
「裏切り?」
RRAIはザドに耳打ちをする。その後、ザドはRRAIと別れ、拠点へと戻るのだった。
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