接触。

 翌日、RRAIが指定したのは彼女が好む海沿いの公園だった。出かけるまえ珍しくしおらしい様子のネッドに、ザドはレアの事をお願いした。

「君はこの依頼を受けなくてもよかった、君たちさえよければ、君たち二人をかくまうこともやぶさかじゃなかった、君たちはとても大切にされているようだし」

「いいのよ、あなたたちにはお世話になった、わけありの私たちを、なんのためらいもなく受け入れてくれたし、何の見返りもなく世話をしてくれた、それよりもし私に何かあれば、レアをお願い」

「ああ、でも護衛をつけなくていいのか?うちのダズは、腕利きだぞ?」

「……」

 ダズに目を向けるザド。

「いいのよ、あの子が悲しむから」

「?ああ」

 博士がみるとダズとレアは寄り添って木陰でやすんでいた。

「では、いってくるわ」

「ああ、きをつけて」

 その後妹とダズも、それからエリーもよってきて皆で彼女を見送ったのだった。


 コロニーをでると、道中は何の危険もなく、誰かに監視されているような様子も、誰かにつけられている様子もなく、ザドはコロニーをぬけて、指定された5キロ先の場所へと向かった。地上で昼食をすませ、準備万端という感じで、時折はしりながら落ち合う場所へといそいだ。風がここちよく、敵にあう頻度も少なく、ザドは、ひさしぶりに落ち着いた一人の時間を楽しみながら、足を進めるのだった。


 やがて、RRAIが指定した公園の端までくると二人の姿を探した。二人は公園の奥、海沿いの歩道から海を眺めており、クローラははしゃいでさえいた。その後ろ姿を見て、そして彼女の腕の中にいるクローラの無事な様子をみて、少しおちついて、ザドはため息をはいた。

「よかった」

 彼女がしばらく二人をみつめているとRRAIが潮風にふかれながら髪をかき上げうしろをふりむいた。

「RRAI……」

「ザド」

 見つめあう二人。ザドは特製銃をとりだした。しかしRRAIは何の武器も構えず丸腰で、クローラとともに歩み寄ってくる、ザドはその様子にフッと軽く笑いがもれ自分も銃をしまう。公園の中心までくると、クローラは背中を押され、ザドのほうにはしってきて、ついに彼女にだきついた。

「久しぶり!!お姉ちゃん!!」

「クローラ……無茶をして、でもあなたが無事でよかった」

クローラがザドがだく腕をふりほどき上をみつめると、ザドは涙を流していた。

「本当に……」

「お姉ちゃん、ごめんなさい、私何かできないかっておもっちゃって……」

「いいのよ、あなたが無事なら」

 そういってたちあがり、RRAIの方を見るザド、彼女はすっと真剣な顔になりこちらをにらんでいたので、ザドはクローラに“公園の遊具で遊んでいて”というと、RRAIによびかけた。

「ひさしぶり」

「ええ“ザド”ひさしぶり、少し海辺で話ましょうか」

 そういうとその通りザドは彼女に歩み寄り、二人は公園のそばの歩道へとあゆみをすすめたのだった。

 《キィ、キィ、キィ》

 潮風がここちよく、クローラは子供らしくブランコをゆらしていた。

「それで、RRAI、私と何の話が?」

「……あの子を返すかわりに、私の30日を守って、なんでもいいから交渉をして“彼ら”の動きを止めてほしいの」

「RRAI、本当にそれだけでいいの?そもそも30日をすぎるまであなたは行方をくらませてくれるっていってた、そのために私は、あなたを信じた、そもそもただこれだけのために本当に彼女を誘拐したの?もしかして何か別の目的ができたんじゃ?」

「いったでしょ、私は、たまたま彼女と知り合ったの」

「でもそれって本音?あなたの目的は、本当は何なの?」

「私は……」

「おねいちゃん!」

 後ろをふりむくとクローラがたんぽぽをふたつ、クローラとザドにわけて、今度は別の遊具に向かっていく姿が見えた。




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