願い
翌日、RRAIの指定した場所で落ち合うことになり、ザドは久々に妹の部屋でともに眠るのだった。妹の足は大分回復してきたとはいえ、まだ戦闘を行えるほどではない。ザドとレアは同じベッドに眠りながら、ザドはレアを心配しながら、眠るまで様子をみていた。
「起きている?」
「ん?」
「まだ起きていたのね、ダメじゃない、ちゃんとねなきゃ」
そういってザドはレアに掛布団を掛けなおす。
「お姉ちゃんこそ、大丈夫?明日」
「うん、だけどあのRRAIをどこまで信じていいものか……ネッドも確実に信用できるわけでもないし、私は……あなたをまきこんで」
「お姉ちゃん、お姉ちゃんの選択に私は最後まで従うわ、お姉ちゃんはまちがってない、正しい正しくないじゃなくて、お姉ちゃんのリードがないと、私は張り合いがないもの、正しくともそうでなくとも、私は従う、それが私の安心なの、お姉ちゃんが私をつくってくれた、たとえ間違った選択であろうと、私はそれを避難し、あなたを責めるだけでよかった、それがどんなに横着で、楽だったか、あなたを責めるだけでいいんだもの、本当は私がわるくても」
そういいながらレアが笑うと、ザドも布団の中で一緒になってわらった。しかしザドは不安だった。確かに妹の事を最善に考える事はある。というよりだからこそ、自分を大事にできてきたし、いつだって真剣に人生に取り組んでこれた。だがその“決意”にはいつだって勇気がいった。妹をいじめから救った時も、本当ならもっと早く助けられたかもしれなかったが、一緒に傷つく決意がたりず、少し助けるのが遅れてしまった。だがその時以来、考えるより早く妹より傷つくことを意識している。そうすれば彼女の笑顔を守れるのなら、どうせ後悔するのだから、たとえ自分の決断で自分が傷つこうと妹だけは守ろうと思えるのだ。だが、迷いは常にある。その時もこう考えた。
“RRAIには、“私を犠牲にして”と嘆願したが、本当に妹を救って、自分が死ぬ事を、私は望んでいるのか、私は怖くないのか”
そんな不安が。そんな時はこう考える。
“妹の中で自分は生き続けるのだから、何の問題もないはずなのだ”あの時、妹を助けたとき、それより前、妹が父の死を目撃したときから考えていた、“私たちは一心同体だ”と。そうすると妹の苦しみや喜びが体を覆うような気がして、妹がそれに触れるまえに妹を守ろうと思うのだ。より良い道を選んでほしかったのだ。
RRAIとクローラはその日、夜まで大胆に地上を散策したり、滅びたコロニーを探検したりしていた。クローラは姉妹の美談を語っていた。何をするにもまず自分が試してから妹にまかせる姉の過保護な姿。そして本当の力を隠している姉の姿。妹のレアのほうはレアのほうで人一倍気が利くし、やさしい。そうクローラが話して聞かせると、RRAIはなぜだか悲しそうに眼を伏せるのだった。探検の終着点、まだ廃棄されて新しいコロニーで機械燃料と食料をみつけ、それをクローラに分け与えたRRAIは、クローラとともに放棄された家具のある落ち着ける場所にこしかけ、おいしそうに食事をするクローラをみながら、こういった。
「あなたも、ネッドも、私は異世界では見てこなかった、未来が決まっていなければ、私も気が楽なのに、私はおかしくなってしまったのかもしれない、自分がだれであれ、人がどうであれ、本当はどうでもいいはずなのにね、自分に期待さえできるなら、私はもう、どうなってもいいのよ、“彼女”と同じように」
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