失踪

 その5日間に起こったことといえば、静かで何もないような日々と、ネッドとザドの奇妙な静寂と対立関係だった。ネッドは何をするにも機嫌が悪く、ネッドを脅す理由も手札もないザドは、居場所をくれた彼を脅し、何も持ち帰らなかったことに罪悪感を感じないわけでもなかった。


 帰還してから2日目、夕方ごろネッドが通信回線をジャックしたと知らせるので、彼の言う通り彼の部屋にいくと、確かにクラックスの通信回線をジャックしていたようだった。

「どことどこの?」

「シー、どうやら、本部と日本支部だよ」

 通信回線はこんな内容の話をしていた。どうやら、支部長と本部長との会話らしい。

「“代表のご子息”の様子は?」

「はっ!代表の指令通り電気椅子を使い軽い尋問を続けております」

「“彼女ら”はクラックスの中でも特に優秀だ、失うわけにはいかんのだ、なんとしてでも居場所の手がかりを吐き出させろ」

「本部長……でも、よろしいのでしょうか、こんな、もともと拷問器具類はRRAIや敵対する組織のためのもの、いくら代表の命令でも、いまだクラックスのリーダーの位をとかれているわけでもありませんし」

「黙って従っていればいい、緊急事態なのだ、冷徹でなければクラックスの代表などつとまるまい、それに“特殊離反者”と接触したとあれば、なおのこと……それにあの程度の苦痛に耐えられない男ではない“超能力者たち”はな」

「……」

 通信はそのあと雑多な会話をしたあとすぐに切れた。

「いいのかい?リーダーを助けなくて」

「……」

確かに、会話の内容を読み取ると、アデルがひどい取り調べを受けている様子だったが、彼の言葉を信じ、RRAIを少しでも信じるのなら、自分の最も大事な妹を守る以外の選択肢はなかった。

「まあいい、少し重要な情報も手に入ったし、君の事を許そう、ここ数日つらく当たってすまなかったね」

 なぜか、そのあとからネッドの機嫌は微妙によくなっていくのだった。レアも眠っているその時に、ザドは深くそれについて問う気にもなれなかった。


 その後、ザドはレアが起きるまでは、気晴らしに本を読んだり庭の手入れをして過ごすのだった。ダズは何もいわずにその様子を見守っていた。時に気を使ってこちらを見たりしてくれていることに気づいていたし、妹の様子をよくしらせてくれたのだった。


 レアが目を覚まして、あたりを見回す。まだ包帯がまかれ痛む足を引きずりながら、拠点を歩いて回る。庭に出ると声がかかった。

 「起きたのね、レア、よかった」

 優しい笑顔、どうやらザドは、ダズと庭の手入れをしているようだった。平穏な日々と生活がそこにあり、なじんているザドをみて、くすり、とわらった。だがすぐさまレアは額からあせがにじむのをかんじた。この日常には、にぎやかさと元気さがたりない。その理由にもきがついていた。いつもなら、はつらつに動き回る影がない、クローラがいないのだ。どこかに隠れていればいいが、何やら不安が頭をよぎる

。というのも、朝は必ず庭に水やりをして、お絵かきをするのが彼女のルーティンなのだ、次の瞬間だった。背後の部屋がバタン、と大きく開いたかと思うと嫌な言葉が耳に入る。

「娘が!!娘がいない!!どこをさがしてもいないんだ!!」

 ネッドが自分と同じように当たりをみわたしながらわめくのだ。

「どうしたの?」

 ザドが近づいてきて、ネッドの肩にてをあてる。

「すまない、すまない、君に頼まなければいけない事があった、僕は今の今まで……」

「ネッド、ネッド落ち着いて!!詳しく話をきかせて」

 そういうと、一同はみな、ネッドの部屋に案内されたのだった。

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