焦燥
RRAIを追う一方でザドは、ネッドから提示された“提案”の事を考えていた。妹にも伝えていなかったが、ネッドは彼女らの“ESPリング”と似た者をRRAIが身に着けている可能性があるからそれを奪えと、それが彼らの“弱点”だといった。
「まさか、RRAIが私たちの組織(クラックス・ガーディアンズ)に関係があるというの?」
そう尋ねると、ネッドはその通りだと答えた。
「ESPリングを奪え、あるいは交渉でもいい、それを手に入れたら君たちに有益な情報を渡そう」
ESPリングとは彼女らクラックスの超能力を制御するためのものだ、もしそれが事実だとすれば、組織は……クラックスガーディアンズはとんでもない情報を隠している可能性がある……。それを知ること自体が危険である可能性もある。だがザドは今更その道を引き返すわけにもいかなかった。
現在、がれきや崩れやすい足場を器用に飛び移りながら、ザドとレアは地下の女性が襲われている箇所までおりていく。小さな切れ間だったその隙間は近づくとがれきの天井がかぶさっているだけの大きな穴だと気づいた。
「キャー!!」
地下に降りていくと、悲鳴は大きくなっていく、アンドロイドたちが、女性を襲い、女性は服をぬがされ、暴行を受けているようだった。すぐ手前までくると二人はお互いにアイコンタクトをかわす。
「グオオオ、グオオ」
《ドス!!》
ザド「フッ!!」
レア「ハアッ!!」
ザドとレアはいきなり、女性につかみかかっていた3体のアンドロイドたちをけり倒して電気ショックを与え、心臓部のコアを取り出した。二人はお互いを背にしてアンドロイドの群れと対峙する。いきなり女性が襲われている中心部にはいったが、その周囲にはわらわらとアンドロイドたちがかこっている。
「くそ、このアンドロイドたち、何が目的なの!!」
ザドはレアに向かって叫んだ。
「超能力を使うよ!」
「わかった!!」
そういうと二人はポケットからライターをとりだし、着火するとそれにてをかかげ、アンドロイドたちに振りかけるような動作をした。すると火はその通りに大きく燃え上がり、アンドロイドたちをひるませ、距離をあけさせた。
「いまだ、逃げるよ!」
その時だった。奇妙な声が、先ほど倒してコアをぬいたはずの倒れたアンドロイドから洩れてきたのは奇妙な言葉だった。
「同じ、彼女、同じ、けれど、病気……」
そちらに目を向けた一瞬、それは起こった。
《グサッ》
「ウワアアアアー!!!」
鈍い音と、叫ぶレア。後ろを振り向くと、さきほどまでおびえていた女性が変形し、手が4本にわかれ、その一つ一つの突端が凶器のように鋭くなっていて、その一本が、レアの左足ふくらはぎをつきさしていた。
「レア!!」
あまりの事に、ザドは一瞬思考をうしなった。女性をみると、頭に青い腫瘍―(アンドロイドウイルス)―ができていた。
「そういう事か、彼らは仲間だったんだ……」
ザドは首をふって正気を取り戻すと
「キュラー!!」
と叫び、剣モードに変形させ、すぐにレアの足をつらぬいた一本の手をきりさいた。しかし、さきほどまでアンドロイドたちの間にあった火の手はおさまり、アンドロイドたち全員がこちらをむいている。それに狂暴なアンドロイドウイルスにかかった女性型アンドロイド、先ほどとはうってかわってまるでリーダーのようになっていて、こちらに向かって咆哮をあげる。
「クワアアアア!!!!!」
その時だった、背後のどこかから声があっかる。
「こっちよ!!」
斜め後ろを向くと、がれきの隙間から自分たちによくにた存在―RRAI―が顔をだしていた。
「こっち、早く!」
「クッ、今はあいつについていくしかないか」
そういうと、妹の肩を抱えて、ザドは急いでその方向にはしった。人一人がやっとぬけられそうな隙間があり、まずは妹をとおし、妹を守りながらザドは敵の攻撃を剣を使いいなしたり、軽い斬撃を与えたりしながら、その場から脱出した。敵は、間抜けなことにウイルスにかかったアンドロイドが変形したためにそのまま出口にひっかかっており、ザドは後方をがれきでふさぎながら、RRAIの後を追う、その後もがれきの合間をぬい、複雑な迷路のような地形をRRAIの後をついて急いで逃げ回るのだった。
ある小さな部屋につくと、RRAIはいった。RRAIの体をみると動きやすいようにかジャージをきていて、その上にコートをはおっていた。
「ここなら大丈夫よ、あなたたち、なぜここに、なぜ私がここにいるとわかったの?
彼にはあった?」
ザドは丁寧に、お礼というわけではないが彼女にいままでの経緯を説明する。レアは怪我の部分を応急処置をして小さな隣室で休ませると、つかれたようで寝てしまっているようだった。ザドがそちらに視線をやると。RRAIはいう。
「大丈夫、ここは絶対安全よ、野良アンドロイドを近づけないためのコロニーの電磁システムが生きているから」
寝息をたてるレアをみてザドはいう。
「昔からああなのよ、彼女は苦しみに慣れていないから、なのに私はあの子に甘えてばかり……」
「本当に“あなた”が甘えているのかしら、私はあなたが“するどい武器を隠している”ように見えるわ、能ある鷹が爪を隠すように」
「??」
ザドはとぼけて、暗がりからするどい眼光を光らせるRRAIの視線をさけた。
そして、彼女が寝ている事を確認すると、ザドはもう一つの話題をきりだした。
「あなたのESPリングが欲しいと、ネッドはいっていた」
ザドは首元にてを近づける、ESPリングは、黄緑に光るチューブ状のもので、超能力を供給源としてその能力を一定レベルに制御する役割をもつ。だがザドがRRAIの首元をみるとそのESPリングはつけていないようだった。その話の全てを聞くとRRAIは少し取り乱したようにいった。
「……そんなはずは、私のコレを奪えといったの?」
そういって、彼女はESPリングをみせてきた、しかしそれは左の襟の中、手首につけられていた小型のブレスレッドの形をしていた。
「これは……ESPリングなのね」
「そうよ……でも」
RRAIは少し考え、首をふると、こうきりだした。
「どうしても渡せないわ、変わりに“有益な情報”をあげる」
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