姉妹。

 旧文明の残骸、さびれて朽ち果てていく都市、それを飲み込むように陥没した巨大なクレーター状になった都市の入り口にいた。日本の中央部、かつて栄えた国の首都にその場所に十数キロにわたるそれがあった。その端の古びた小さな建物の屋根に、ザドは片膝をたてクレーターの下を見下ろし、レアは足を屋根からぶらさげるように遊ばせていた。レアがぽつりつぶやく。

「暇ねえ、まだ時間じゃないから」

「……」

「お姉ちゃんはドッペルゲンガーって信じる?」

「は?」

 レアはポケットから、道中に摘んだ花をとりだし、花弁をむしり始めた。

「ドッペルゲンガーはこの世界のどこかに、自分と似た人間がいて、その人と出会ってしまったが最後、死ぬなんて話もある」

「面白い迷信だな」

「RRAIって何なんだろうね……」

 ザドは迷信にあまり興味はなく、その話を流し聞きしながらも周囲の物音にきをくばっていた。というのもこの場所を指定した“ネッド”いわくここは世界のならずものや、暴走するアンドロイドが多くいる場所で、物音をたてるだけで危険な場所らしい。この日本でもっとも危険な場所だという。

「お姉ちゃん……」

「なんだ?」

「昔のこと覚えている?」

「何のこと?」

そうきくと、レアは少し笑って、姉をちらりとみると下に目を向けて、語りだした。

「昔―私が同級生の女の子たちにいじめられていたとき、私を助けてくれたでしょ、私は鼻血をだして、おしっこまでだして、一番ひどいいじめの時に、私のこと……」

「ん?そうだったか?私が助けられたような気がするが」

「また、そうやって……とにかくお姉ちゃんが助けてくれたのよ、あの時私にはじをかかせないように色々気を使ってくれたけれど……だけど、だからこそ……」

「まて!静かに」

 下をみると、ごそごそと機械音がして、地下へと下る崩落したコンクリートの地面の隙間から、アンドロイドたちの姿がめにはいる。その下にかつて使われていたであろう巨大なコロニー群が目に入る。ここは、コロニー群の起こした爆発事故により地盤が破壊され、巨大なコロニーになったという。その地下はどこがいつ崩落してもおかしくないような場所でおまけに迷路、だからならず者や野良アンドロイドが集まるのだ。アンドロイドたちを見ていると、次にそれらがある地下への隙間のある地点に集まっていることがわかった。

「お姉ちゃん、あれ」

 妹が指さす先をみると、ある人間が襲われている状況が目にはいった。

「キャー!!」

「女!?」

「お姉ちゃん、私たちの声に似てるきもするわ、RRAIかも」

 そもそもここで姉妹が待機していた理由も、ネッドからここにRRAIが現れるという“予想”の情報を手に入れたから。彼女らは、まさかと思い顔を見合わせるとお互いに頷き地下に降りることにした。

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