「そんなことより、私はすぐにでも“あの話”をしたいのだけど、特殊離反者“ネッド”」

「ああ“イレギュラー”の話だね、君たちを殺さずに対話するRRAI、君たちが出会ったのも“ソレ”かもしれない」

「最初は信じられなかったけど、あのRRAIは好戦的じゃなかった、それどころかあなたを紹介したり、私たちになんの危害を与えない可能性さえしめした、目的がなんであれ、私たちはまだ子供、何の害もない解決作があるなら、それにかけようとおもった」

 握手をとき、今握手をかわした右手自分の胸元にちかづけを握りながら、ザドはあのRRAIと出会った時の事を思い出していた。あのRRAIは追い詰められる中でも、嘆願するでもなくただ顔に真剣さをにじませながら彼女らを説得した。

【ヒントをあげる、あなたたちにもいい事があるし、私にだっていいことがある、私はたった30日自由になれるならそれでいい、RRAIはただの“外敵”じゃないわ、この世界の隣人、その秘密を知っている人間が一人だけいる、“彼”は、あなたたちクラックスには、上層部からこういわれているはずでしょう“クラックスの天敵”“RRAIに味方をする変人”けれど真相は違うわ、彼にあって話をしてみて、少しでもこの世界の“真相”が見えてくる、あなたたちの超能力の“謎”もね、あなたちは上層部から知らされてない事がたくさんあるはずよ、だって“超能力があるなら戦え”“人の役に立つことをしろ”それがクラックスの条件なのでしょう?それも、変じゃない?】

「……」

 結局ザドは、その言葉を信じた。妹に危険が及ぶ事や妹を亡くすことなど考えられもしなかったから……。

 ザドは一歩前にでる。銃のあるポケットに手を突っ込む。

「早く、例の件についておしえなさい、さもないと……」

 そういってザドはネッドにつめよる、ネッドは両手をあげて、まあまあ落ち着いてというのだった。その様子をみて、またもや妹のレアが割って入る。

「子供の前で喧嘩をしないで?お姉ちゃん。その話はまたあとでいいでしょう。それに“仲良くなるのよ、まずわ、秘密の多いひとたちだから”」

「でも……どうしてお前はそこまで」

 少し下をむき、恥ずかしそうに妹は姉の前で両掌をくんだ。

「彼らは、私をたすけて、あろうことか何の警戒もなく受け入れてかくまってくれている、お姉ちゃん、順序が重要よ、まずはここのルールにしたがって、彼らに感謝をして」

「あ、ああ、そうだな……まあお前がそういうなら」

 ザドはちらりと男―ダズ―をみる、もしかしたら恋仲になり離れられなくなっているかもしれない。仕方なく焦る想いをおちつけた。


 その夜、ザドは神殿の左奥の部屋で休むようにネッドに案内され、その通りにした。妹は右の部屋にいた、クローラも同じ部屋らしい。ネッドに案内されると別れ際ネッドがドアを閉めようとする際、またもや胸倉をつかみ、こういった。

「どういうつもりなの?私は急いでいるのよ?」

「君にはまだ時間があるだろう、少なくともその半分はこちらいくれ、“お互いの信用”のためにお互いにリスクを冒している、君は“時間”こちらは“場所”を提供する、それに――こちらも調べものがあるのだ、できるなら“良質な情報”を上げたいのだ、君たちに最もリスクのない方法を」

 ザドは朝の妹の態度を思い出し、おとなしく胸倉をつかんでいた手をはなし、こういった。

「できるだ穏便に、友好にいきましょう」

「同意だよ」

そういうと、男はさっていった。


 翌日。

 ザドは曽於非ここに住む人々を観察していた。あまりに暇なので許可をとり書庫で本を読み漁ったがそこに重要な情報はないようだった。よくある“旧文明の崩壊後”にかかれたものばかりだ。

 そんな中、ドアの向こう、庭では妹とクローラが遊んでいる声がきこえていた。

「わーい、お姉ちゃん」

「どうしたの?」

 その様子をみようと、書庫からでて、神殿の入り口で、柱にもたれ本を読みながら妹を観察するザド。

 (本当に妹はあの後の妹か?物静かで、誰よりも状況を掌握しているようにみえる、それは、クラックスの組織ですらすべての判断を、本当は最後に姉である私に仰いでいたその姿とはまるで別人だった、まさかRRAI……まさかな)

 その日、ザドは様々な所である視線を感じていた。初めは気にしていなかったがその視線は何かもの言いたげだったので、その視線のありかをさがしていたが、結局その日はわからずにいた。


 その夜、ある人物が部屋を訪ねてきた。

 《コンコン》

 神殿の左奥の地下へとつながる一室をあてがわれていたザドの部屋に、ドアをたたく音がした。

「はい」

 ドアを開けるとそこにいたのは、医者でありメカニックでもあるという彼女、エリーだった。

「シー」

 開けた瞬間から静かにしろと口に人差し指をあてがい、なかにいれてくれるように左手でドアをしめるようにパタパタと合図するエリー。その通りにしてドアをしめると、エリーは平謝りをした。

「夜分遅くにごめんなさい、それに今日はあなたのことじっとみていて」

「ああ、あなただったのか、そんなことは別に……それより、どうしたんです?エリーさん……」

「いえ、あなたの手助けになろうとおもって、あの人には、ネッドには注意しなさい、何考えているか時々わからないから」

「はあ……」

 部屋に通すとベッドで色々な事を話した。エリーは自分の事情をすべてではないが話てくれた。

「私はあるコロニーを追放されて、そのコロニーの力を逃れるために彼と行動をともにしている、けれど彼の研究や“クラックス・ガーディアンズ”との紛争には興味はないの、それにね、彼の研究については私に秘密が多すぎる、彼と関わったことで失踪した人間を何人かみたわ、私は彼が何か、とんでもない実験をしているような気がしてならないの、それにね……RRAIの“遺物”を集めているのも知っている」

「それでも私は」

 と、今度はザドが引き受ける。ザドは二人きりでしかない家族である妹との絆、なぜクラックスに所属していて、なぜ離反しているかを話した。

「私たちは、二人しかいない大事な家族、私も妹も少しでもお互いが傷つくのをみたくないし、死にもきっとたえられない、小さいころから支えはお互いでしかなく、本当に心を開いているのは家族だけだから、だから今度だって妹は、私の事をまもろうとしている、私がRRAIと取引しなくても妹がクラックスを離反した、わかるの、双子だから」

「なるべく私も力になるわ、けれどここに来た事は秘密にしてね、くれぐれも、あまりここの人たちを信用しすぎないように、特にリーダーを」

「ええ、それにそこまでここの人たちと深くかかわりを持つつもりもない、クラックスリーダーの至言2、仲良くなりたければ仲良いふりをしろ」

「何て?」

「いえ、なんでもない、それでも見た目上はうまくやりとりしないと」

「それは……そうね」

 そういうと、そのあとエリーはそそくさと部屋をでていって、静かに扉を閉めるのだった。


 翌日。その日も読書やストレッチをしながら妹の様子を見ているザド。レアは、やはり男とべったり過ごしているようで部屋も神殿の奥で右の隣同士。どうやら男の事を好きらしい。別に姉として問題はなかった。何より彼女の選択を尊重したいのだ。

 その日も男と一緒に何か農作業のような作業をしたり、掃除をしたりしていた。男はニカリと時々わらうし、彼は不気味でもあったが、そんな彼に妹はくったくのない笑顔をみせていた。レアはその日男といろんな話をした。ここは過ごしやすいとか、住人があったかいとか昔こんな事があったとか、時折やすんでは、姉と自分のことを男―ダズ―に小声で話しかける。ある時にある木陰に二人で腰かけて休憩するとき、姉のほうにちらとめをやって、耳打ちでこんな話題を小声で持ち出した。

「ダズ」

「ン?」

「何度もいってるけど、姉に変化があったら教えてね、もしかしたら単独でRRAIの情報を聞き出そうとするかも、けれど、あの人―ネッド―は秘密が多すぎる、私はできるだけ穏便に情報を聞き出したい、ネッドが私たちを信用するまで、もし姉がネッドから情報を聞き出しても、きっとその情報は危険な情報である可能性が高い、姉を一人で危険な目に合わせるわけにはいかない、RRAIに直接接触するだとか、クラックスガーディアンと敵対する事はさけないと、それに姉は弱いから私が守ってあげないとだめなの、きっと一人で抱え込むから、だからなんでも教えてね、私を守ろうとするより早く姉を守りたいから」

「わかった……」

「着飾ることも苦手だし」

そういって、レアは胸元のペンダントに男のてを引き寄せた。レアはここにきてから、クラックスの制服を一度もきてはいない、かわりにここで借りているワンピースばかりをきていた。

「彼女は私になれない、私が彼女になれないように」

 やがて男の手を放すと、無垢な二人の笑顔のペンダントを握り締めるのだった。父が死ぬまえに仲が良かった家族の母と父の手のひらで笑う二人の笑顔の写真だった。姉とは違い、両親の顔はうつっていない、二人だけのアップの笑顔が映っているのだった。

 やがて、二人が休んでいる木陰に、一人彼らの傍で草木とたわむれていたクローラがたたっと走ってやってきて、花冠をてわたしてくれた。

「これ、おねえちゃんに!!」

「ありがとう!!」

 そういって花冠を頭にのせると、わーっと一層喜ぶのだった。

「いつものお礼だよ、レアお姉ちゃん」

「どうしよう、私もお礼しなきゃ」

 そういうとクローラは首をふった。

「その代わりにザドお姉ちゃんの好きなものおしえてね、この前のお礼がしたいから」

「うん」

 クローラはそういうとふりむいてそそくさとはしりさっていってまた一人、庭で遊び始めるのだった。

「お姉ちゃん……か」

 そういって、彼女は意味ありげにしたをうつむくのだった。

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