公園

 ザドは、公園でバーベキューをしながら過去の回想にひたっていた。

彼女らの悲劇が始まったのは彼女らが幼少の頃父が、事業に失敗して首をつってしまったところだった。それを目撃した妹はどれほどつらかっただろう。もともと仲が悪かったわけではなかったが、妹がそれから暗いめをして、以前より無口になったので彼女もそれにあわせて彼女をかばうようにより無口になった。

 さらに悪くなったのは、以前からそういう部分があったが以前に増して母がヒステリックを起こすようになったからだ。落ち着ける場所は家にはなかった。まるで父を失った苦しみをぶつけるように母は娘たちにつらくあたった。それらがおきたのは小学生高学年の頃だ。それから友達の家を転々とする学生生活がはじまり、双子は珍しいといって友達はたくさんできた。

独り立ちしたあと、家を空ける事がおおくなった私たちのせいで、孤独にたえかねた母が死んだ。私たちにクラックスチーム以外、戻る場所はなくなった。


「それにしてもおそいわね、ここによく現れるときいたのだけれど」

 

 ザドはRRAI、自分たちによくにたあの生命体に、二人の老人を探せといわれた。二人で手分けしてその存在を追っているが、いまだに彼をみつける事ができずにいた。

 「髪の毛が触手のようになっている老人か、そんな老人いるのかしら」

 《ザッ》

 その時、彼女の背後で足音がして、そちらに目を向ける。

 「……」

 しげみから立ち上がった老人の風体は、あのRRAIに言われたものそのものだった。

 「サイボーグ……?」

 「おぬしらか、ワシをさがしておったの、わっ……」

 《チュドン!!》

 そう言いかけた直後、老人はその背後の木陰から、銃で撃たれたようで前向きに倒れこんだ。

 《ドサリ……》

 (うそ、こんなあっけなく……)

 両手をあげて倒れこんだ老人はどうやら電気銃で撃たれたようで痙攣している。ザドが近寄り脈をとり胸に耳を寄せると奇妙な心音が流れていることに気づいた。

 《コトン、コトン、コトン》

 「この人、アンドロイド?しかもすごくボロイ」

 数分間、彼女はなんとかアンドロイドの端末を操作し、彼の命をつなぎとめようとしたが、介抱もむなしく、そのアンドロイドはすぐに壊れて動けなく、彼女に言わせると息をひきとった。

 

 そこで初めて、ザドは老人をうった人間、老人のたっていた真後ろで木の後ろに隠れ突っ立っている人影に目を向けた。その質問もほとんど意味はなかったかもしれない。なぜならこんな突飛に行動をする人間が何者か、心当たりはついていたのだから。木陰からこちらに向け歩いてくる足音、落ち葉を踏む音が聞こえる。

「だれ?」

 たちあがり、顔を上げる。懐かしい顔がそこにあった。

「久しぶりだな」

「リーダー……」

 刈り上げと、後ろ向きにかき上げたショートのヘアスタイル。前髪は左右にアップ気味で髪は後頭部に綺麗に流れる。クラックスのリーダー、アデルである。


 ザドは立ち上がり、腰にあるクラックスの特殊な電気銃を取り出そうとする。それより早くザドに銃口をむけ、叫ぶアデル。

「動くな!!」

 ザドは両手をあげ、嘆願する。

「お願い見逃して、さんざん人々に貢献したのだから、お願い」

「そうはいかない」

「じゃあ、話を聞いて」

 そのときリーダー、アデルの銃を握る手が緩む。銃口を少し下にさげたのがみえた。

「決闘だ、非殺傷ゴム弾に変えろ」

「本気なの?今?」

「何かまずいのか?」

「いいえ、私今、大事な人を殺されて“頭に来てる”から」

「フッ」

 

 ザドは言われるがままに拳銃を《非殺傷ゴム弾モード》にかえ、専用のカートリッジを挿入した。

 「じゃあ、3秒数える。0になったらはじめるぞ」

 アデルが説明する中、二人は公園の林に移動し、“決闘”の準備を整え、互いに木の後ろに隠れながらその準備をおえた。

 《ザッ》 

 《スッ》

 「準備はいいか?いくぞ?」

 「ええ」

 二人の間に緊張がながれた。ザドは電気銃を上にむけ、木の後ろから横目にアデルをみていた。アデルはしゃがみこみ、下向きに電気銃を構えていた。

 「3,2,1……」 

 ゼロ!!という言葉がはなたれるよりはやく、ザドは右足に力をこめ、木影から木陰に移動する。

 「ゼロ!!」

 《ザッ・ザッ・ザッ》

 リーダーのアデルの身体能力はすさまじく、ゼロといったそのすぐあと、すぐさまその足音のする木の後ろにまわりこんだ。そして呼吸をひとつ整えると、木の後ろに銃口をむけた。

 「いない!?」

 《ハッ》

 そこには、ただ先ほどまでそこにいた気配だけが残り、夕暮れの薄暗い怪しげな木陰にひとつ、何も知らないように平然とした木がつったっていただけだった。すぐに背後にきをくばりふりかえるアデル。背後をとられていることに気が付いたのだ。それと同時に背後からザドの銃口がアデルの方向へ軌道をかえようとしていた。

 《ガチン!!!》

 アデルとザドの拳銃の銃口と側面がかさなりかみ合い、お互いの耳スレスレをゴム弾が流れる。

 《シュン!!》

 《ピュッ!!》

 「さすがアデル、私が“わざわざ落ち葉を踏んで足音をだした”のにすぐに気付いたのね、この辺の落ち葉はバーベキューに使ったから、ここから先は音がしなかったのよ、だから私はその“木”の位置までわざわざ大きな音をたてた、けど!!」

 すると次の瞬間、ザドはしゃがみこんだ。

 「!?」

 まるで無防備な頭部を上にむける。敵が明らかに不利な姿勢をとった事に一瞬、アデルはたじろいだ。だがさすがリーダー。次に意識するときには、トリガーに力をこめ弾を放った。

 《バキューン!!》

 その瞬間、ザドはゴロゴロと左にころがり、すんでのところで頭部に当たるはずだった弾丸をよけ、器用にもなめらかに肩をねじまげかわした。そしてアデルの側面から腹部にむけてゴム弾を放つと、アデルが転がるように前によけたので、その隙にアデルの背後をとり、ひざを拳銃を握る手の底で突き、股間に蹴りをぶつけた。

 「動くな!!」

 「!!!」

 そしてザドはたちあがり、リーダーアデルのこめかみに銃口をむけた。

 「私の勝ちね」

 「さすがチーム一番の柔軟な体をもつ君だ」

 そして決闘はひとつの決着を迎えた。




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