クラックスオフィス

オペレーター・レイが、窓際に陳列された端末で、失踪したザド・レア姉妹を追っている。

「クラックスの制服を脱ぎ捨てて、追跡できません」

 その後方で、仕事机の集う隣仕事場に隣接する、ガラス張りの会議室に集まりながら、クラックスメンバーと責任者たちが会議を開いていた。引き戸が両端にひらかれたままになっており、オペレーターの視界が通るようになっている、オペレーターが会議室に目をむけた。

男性課長「だから、あれほど肉体にGPSを埋め込めばいいと」

女性部長「何かいったか?ジルゲンス」

男性課長「い、いえ何も」

女性主任「あれだけ日々コミュニケーションをかわしていたのに」

 会議に一瞬静寂が訪れる。一同の目はクラックスのメンバーに注がれた。

サブリーダー“ジュドー”「リーダー、この失態をどうしてくれる?」

リーダー“アデル”「くっ……」

女性主任「何?何かあるの?」

サブリーダージュドー「いえ、彼が日頃から最も親しかったようなので」

 そういって、いやらしく鋭い瞳をサブリーダーにむける。ジュドーは鋭い瞳と長いまつげ、全体的にシャープな顔立ちをしている。それと相対しているようにリーダーのアデルは太い眉毛、情熱的な瞳、体もがっしりとして少し筋肉質、肉感を帯びた顔立ちをしている。

女性主任「なんだ、その程度なら……」

男性課長「その程度って君」

女性部長「まあ、まあ」

女性部長「一度情報を整理しようじゃないか」

 女性部長がモニターのスイッチをいれる。

 ≪ピッ≫

 「セネット・ザド、レア姉妹」

 姉妹の顔がモニターに映る。よくみたウルフヘアーと、軍服にもにたクラックスのスーツをきている。左肩にクラックスのシンボル、どくろの天使が書かれる。

 「服装も格好もよく似ている、だが妹のほうが能力は高く社交性もある、姉のほうが無口で平凡な能力をもつが、この二人は組ませると“テレキネシス”と“テレパシー”能力がさらに飛躍的に進歩する」

サブリーダージュドーが手をあげる

  「はい、補足します」

女性部長「なんだ?」

 「彼女らは社交性は高かったが、どこか本心や本音はいつも僕ら“クラックス・チーム”には隠している部分があった、だが唯一、リーダーにはなついていた、リーダーは、彼女らと同じような境遇をもつから……」

 まるで憎んでいるように鋭い視線をリーダーに向けるジュドー。

リーダーアデル「……」

 アデルはその視線に気づきながら、しかしまっすぐ正面をみてかわしていた。

女性クラックスメンバー“ケネィ”「いやいや、それだけではないよ、リーダーはいつも面倒見がよくて、だからだと思うよ」

女性部長 「ふむ、彼女が孤児院で育ったという話か」

女性主任 「そういえば、猫を連れていましたねえ、二人の部屋で飼う事を許可しました」

“ケネィ” 「今私と、私が無理なときはアデルが面倒をみています」 

 そこでリーダーアデルが口をひらいた。

 「その猫は、家族だと言っていました、だから置き去りにするはずがないんだ、俺が連れ戻します、施設からここにきてからずっと、誰より俺に心をひらいてましたから」

 サブリーダーが、小ばかにしたように鼻で笑った。

女性部長「そうだな、このまま“平静を装う”のも無理があるだろう、頼めるか、アデル」

アデル 「はい、必ず」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る