第359話 癖っていうのは簡単に抜けるものではない

 時間を空け、やっとみんなが落ち着いたころに、意思疎通ができるか確認した結果。


(「聞こえるか、グラース」)

『聞こえるよ~。凄いね、一回取り着いたら繋がりが継続されるんだぁ~』


 結果オーライになりました。


 離れた後も俺にグラースの感情が流れ込んできておかしいなとは思っていたが、すぐに無くなるとも思っていた。


 それなのに、今はもう一時間は経っているにも関わらず意思疎通ができる。

 成果が得られていないと思っていたが、俺の涙分のもんは手に入れられたらしい。


「どうですか?」

「意思疎通が出来るようになっているぞ。結果オーライだな」


 つーか、目元が痛い。

 ここまで泣いたの初めてじゃないか? どうでもいいけど。


「目的は達成された感じだね」

「そうだな。色々あったが、目的は達成できた。次は、俺の魔力だな。ソフィアは一体どこで調べ物しているんだ?」


 壁側にいるアンキを見ると、首を傾げてしまった。


「わからないのか?」

「予想は出来るっす……。でも、ソフィアさんは猫みたいに自由気ままにどこまでも行くっすから、捕まえられないんすよねぇ」


 いや、でも今は調べ物をしているんだろ?

 調べ物をしているのなら、そういう所にいるだろう。星屑の図書館とか。


「まぁ、ソフィアの性格上、なんか、予測できないよね」

「そうなんすよぉ~。それもわかってるっすから、出来る限り離れたくないんすよねぇ~。戻ってくる保証もないですし」

「えっ」


 え? それは、さすがに困るんだが?

 俺は無意味に足を怪我させられ、魔導書を取られただけになるんだが?


 そんな、盗人みたいな…………。


「あと一週間くらいは待とうか。今日は心身共に疲れているだろうし、休もう。明日から、今度こそ管理者について話すよ。もうそろ話さないと、さすがに危険が近い」


 アマリアの言葉に皆は賛成。俺の魔力がなくなった状態、原因はおそらくウズルイフだしな。

 確かに、危険が近い。今も、どこかで俺達を見ているのかもしれない。


 そう思うと、急いだ方がいいな。

 でも、体も疲れているし、休まないと。


『今日は、もう解散かなぁ~?』

「そうだろうな。このままゆっくり休んで、明日から動き出すぞ」


 よし、このまま俺は部屋にもどっ――――ん?


「どうした?」

「せっかく意思疎通できるようになったのに、わざわざ声に出して会話するんだねって思っただけ」

「――――あっ」


 しまった……癖って、本当に恐ろしい……。


 ※


 目一杯寝てからの起床、体が少し重たいけど、特に問題はない。


「ふあぁぁ……」

「眠そうだね」

「夜はしっかりと寝たんだがな、体に疲労が残っているらしい」


 伸びをして意識を覚醒、よしっ。

 今部屋にいるのって――あれ?


「クラウドとグレールはどこだ? それにロゼ姫も」

「起きて早々クラウドが暴れ出したから、グレールが相手しているよ。ロゼは付き添い」


 あぁ……我慢の限界だったのか。


「ところで、グラースはいるの?」

「あー、そう言えば…………」


 周りを見るけど、いないな。

 気配とかって、意識すれば感じることできるんだろうか。


「格技場にいるはずだし、行く?」


 アルカとリヒトが珍しく寝ていたから起こし、格技場へ。

 起こさなくてもいいとは思ったけど、後がうるさそうだしな。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


 格技場に行くと――――やってんな~。


 硬い物同士がぶつかり合う音、ひんやりと冷たい空気。

 ドアを開けただけなんだが、もうこの場から居なくなりたい気分。


 ――――ガキンッ ガキンッ!!


 光の刃と氷の剣がぶつかり合う。

 次々斬りかかるクラウドだが、グレールは簡単に受け流す。


 互角にやりあっている二人の端、格技場の壁側にはロゼ姫とグラースがいた。


「へぇ、面白いね」

「二人の戦闘がか?」

「そう。しっかりと見てみなよ、クラウドの身体」


 アマリアに言われて、アルカとリヒトと共にクラウドの身体を見てみる。

 動き回っているから目を凝らさないと見れないな……。


「――――あれ、クラウド、怪我してないか?」


 肩が赤く滲んでいる。怪我しているのは明らかだ。

 よく見ると、光の刃は普段使っているより短い。


「クラウドの場合、力が弱くなるだけで、怪我をしても戦えると言えば戦えるみたいだね」

「らしいな。だが、あそこまで戦えるなら、今までも特に気にしなくて良かったんじゃねぇか?」


 あの、グレールと互角にやりあっている時点で戦闘技術は高い。

 タッグバトルの時も、あの戦闘スキルを出してほしかったんだが?


「アルカ。あれは、修行の成果かな?」

「だと思うぞ! グレールが言っていたからな。クラウドの欠点は怪我をした時に大幅に戦闘スキルが下がる事。だから、怪我をしても模擬戦を続けろと」


 あぁ、なるほど。

 それで、あそこまでの強くなったのか。

 体が、低下した戦闘スキルに馴染んだって感じかな


 修行の成果が出ているみたいで、良かった良かった。

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