第82話 俺の金よ、そんな姿になってまで逃げるなよ

「な、飲みこみやが、た?」

「うそ…………」


 俺とリヒトの驚きの声が重なった時、げっぷを漏らしショスが俺達に口を向けて来る。


 来るのは毒か、それともまた違った攻撃か。


 避けたらまずsiegeflameシージュ・フレイムを出し、炎の鳥籠で動きを封じて。turbo flameトュルボー・フレイムを出し、炎の竜巻で包み込む。


 燃えるかわからないが、試す価値はあるはずだ。


 さぁ、何でも来い――え?


「カガミヤ、あいつの口の中、赤くないか?」

「あぁ、赤いな。まるで、俺が放っている炎のように綺麗に燃えているな。いやぁ、綺麗な炎だ、さすが俺の放つ炎」


 気づいた瞬間、ショスの口から俺が先ほど放った炎の竜が放たれた。


 くそがぁぁぁあ!!!!


wave waterウェイヴ・ワーター!!!」


 高波で竜の炎を蒸発させ、そのままショスへと向けて放つ。


「避ける場所はない、そのまま食らいやがれ!」


 っ、またしても口を広げた。

 でも、こんな広範囲、さすがにノーダメージは無理だろ!


「――――――はぁぁぁぁあああ??」


 え、ちょ、まっ、え?


「ぬしの水魔法、吸い込まれたぞ?」

「あいつの身体はブラックホールか!!!」


 まさか吸い込まれるなんて!! 

 放出系の魔法は全て効かないのか? ふざけるな!!


 なら、放出系の魔法ではなく、属性を纏わせ――駄目だ。

 アルカの地の剣が効かないんだった。


 包み込む、広範囲、物理。すべてが駄目なのか。

 次に試せるのは、やっぱり炎の竜巻だな。


 turboflameトュルボー・フレイムで地面から炎の竜巻を起こし、閉じ込め、リヒトのチェインで拘束。


 最大火力のDragonflameダーク・フレイムで食ってやる。


「チサト、水属性を持っているな。私に貸せ」

「…………属性を他人に移す事って可能なのか?」

「魔法を組み合わせるという事だ、もらっても困る」

「あ、あぁ…………」


 焦った、俺の水属性がヒュース皇子に取られるのかと思った。


 組み合わせる……か、なるほどな。

 水と雷は相性がいい、吸い込まれたとしても体内から感電してくれれば。

 痺れて体動きにくくなるだけでもいい。


 少しでも、ダメージ与えられればなんでもいい。


「俺は何を出せばいい?」

「さっきの波でいい、私がそれに雷の基本魔法を放つ」

「了解」


 うねうね体を動かしているショスに狙いを定め、先ほどと同じ魔法をぶっ放す。


wavewaterウェイヴ・ワーター


 高波を作り出し、ショスに向けて放つ。

 タイミングを合わせ、ヒュース皇子が雷の属性魔法を付与させた。


Thunderサンダー!!」


 持っている剣を波へと向けると、バチバチと音を鳴らし、雷が真っすぐ波に向かって行く。ぶつかると、水が雷を吸収し、発光。


 雷の含まれた波で痺れさせてやる!


「少しでもダメージを食らえや!」


 バチバチと雷の纏われている波を、またしても吸い込もうと口を開く。

 またしても吸い込むつもりらしいが、内側からダメージを与える事も可能のはずだ!



 ――――――ドカン!!!!



「っ!?!?!?」


 何処から現れたのかわからない土人形が、ショスを殴った? 

 バランスを崩し、雷が纏われている波をもろに受けた。



 ――――――キュアァァァァァアアアアアアアア!!!!!!



 体に電気が走っている!! 

 今は体が痺れて動けない。


 今しかチャンスはない!!


「スピリト、準備は出来てるな!」

『はい!! なんでももってこいです!!』


 気合十分。

 雷の水の中で暴れているショスに狙いを定め、スピリトと目を合わせる。


「今度こそ、喰われてくれよな! Dragonflameダーク・フレイム


 魔法は一つずつしか出せないようで、wave waterウェイヴ・ワーターが消えた。だが、電気は体に残り痺れている。


『やぁああ!!!!』


 杖を構え、炎の球体と共に炎の竜を操り放つ。

 まっすぐ炎の球体と共に放たれた竜は大きな口を開け、痺れているショスを喰らい尽くす。


 スピリトの杖の動きに合わせ動く竜、俺の魔力とスピリトの火力。


 これで、燃え尽きやがれ!!!!



 ――――――ガァァァァァァァアアアアアア!



 悲鳴が地面を揺らしているが、それでも赤色の炎がパチパチとショスを燃やし続ける。


 このまま何事もなければいいのだけれど……。


 全員警戒を解かずに見続けていると、炎が徐々に小さくなっていく。

 なにも、ない……。燃えつくす事が出来たのか?


 徐々に小さくなっていく炎、燃え尽きたため近づくと、そこには少しの炭しか残っていなかった。

 地面を指で触ってみても、微かな魔物の気配しか感じない。


 周りを見ても、特に何もなっ――……


『主、右側。微かな気配を感じます、早いです』


 っ、横――なんだあの、小さなモンスター??


 あれは、小さくなったショス? 

 俺達から逃げるように走り去っていく。


「待ちやがれ!!」


 なるほどな、俺が炎であいつの身体の半分以上を燃えつくしたから、大きな体が保てなかったんだ。


 早く追いかけ、とどめを刺さなければ報酬がゲット出来ない!!


chainチェイン!!」


 リヒトの声、同時に走っている小さなショスの足元から複数の鎖が出現。ショスを捕まえた。


「おぉ、さすがだな、リヒト」

「戦闘では何も出来なかったので、せめてこれくらいはしなければ、私が共に来た意味がありませんので」


 リヒトの方を見ると、アルカが何故かふらついている。

 あ、まさか。さっきの土人形は、アルカの魔法なのか? 


「アルカ、さっきの土人形はお前の魔法か?」

「あぁ。出している時、魔力を常に吸い取られるし、出す時にめっちゃ使うからあまり出せないんだけどな」


 顔が青い。

 そんな魔法を使ってくれたのか、ありがたいな。

 アルカのおかげで倒す事が出来た。


 杖を握るリヒトの姿は本当に頼もしい。

 後方がいるのといないのでは安心感が違う、マジで助かった。


「さて、身動きの取れないSSランクモンスター、ショス。お前にとどめを刺させてもらうぞ、俺の金になれ」

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