第41話 やっとダンジョン攻略準備に入る事が出来て安心したぞ

 リヒトの事を無視し、真っすぐギルドに向かう。


 ギルドには見覚えのない女が立っていた。

 まだ慣れていないのか、かけている眼鏡をかけ直し、慌てた様子で俺達を見て来る。


「あ、えっと。な、何かご依頼でしょうか!?」

「…………こいつらの行けるダンジョンを寄越せ」

「お、お待ちください!!」


 初心者マークが必要なほどキョドってんな。

 若葉マークを胸元辺りに付けとけよ。


 俺の言葉に急いでパソコンを操作し始めると、俺達の情報を見つける事が出来たみたい。


「えっと、黎明の探検者のアルカ様でお間違いはありませんか?」

「あぁ」

「でしたら、Bランクのダンジョンがあります。えっと、いくつかありますが、どのようなものが良いとかありますか?」

「全部」

「…………え?」

「全部」


 パソコンから目を離し、驚きの顔を向ける受付嬢。

 アルカとリヒトも俺を見てくる。


 いや、だってBランクだぞ? 俺達Sランクのワイバーンを倒しているんだぞ? 

 すぐにお前らのランクを上げないと、俺のランクを上げられないじゃん。


「えっと、今あるBランクの数は三つ。まだ誰も受付していないみたいなので大丈夫かと思いますが。貴方達は大丈夫ですか?」

「問題ない」

「えっと…………」


 受付嬢は俺の後ろにいるアルカを見ている。


 俺が所属する黎明の探検者は、俺がリーダーじゃないもんな、確認するのは当然か。


「カガミヤの言う通り、三つのダンジョンを頼む。期限とかはあるか?」

「そうですね……。一つのダンジョンで一週間。三つなので、三週間ですね」

「わかった、それで頼む」

「わかりました、登録をさせていただきます。アルカ様のライセンスをお借りしてもいいですか?」

「おう」


 言われた通り、アルカはライセンスを渡す。

 すぐさまパソコンに打ち込み、登録を済ませた受付嬢はライセンスを返した。


「登録完了です。では、地図をお渡しします。今印刷しますね」


 …………ん? なんか、こいつ今、俺を横目で見なかったか?

 なんか、企んでいるような…………いや、単純に慣れていないからキョドっているだけか。


 印刷された紙は三枚。それぞれバラバラの場所。

 行くのが面倒臭いが仕方がない。


 早くダンジョンを攻略してランクを上げる。

 魔法にも慣れ、戦闘をスムーズに出来る様にしていかないと宝の持ち腐れだ。


「そうだ。もうそろそろカガミヤの戦闘服を買ってもいいんじゃないか? 金も入ったし」

「あ、確かにそうだね。少しでも防御力を上げて、危険を回避してほしいかな。私の意見として」


 確かにそうだな。今の服は転移した時のを着ているから、結構ボロボロ。

 高かったんだけど仕方がないな。戻る事が出来たら、その時改めて買おう。


「それじゃ、防具屋に行こうか。あと、武器屋にも」

「うん、丸腰はさすがに怖いからね」


 二人の会話に納得。

 そういえば俺、今まで丸腰で戦っていたのか…………。そう思うと、怖いな。


「それじゃ、行きましょうか」

「うん。でも、手は繋がなくていいと思うぞ」

「…………行きますよ!!!」

「え、ちょっ!! 肩外れる肩外れる!!!」


 何でいきなり腕を引っ張るんだよ!! 

 なんで怒り出したんだ!! 意味が分からん!!!


 ※


 辿り着いた先には、木製の小屋。

 両開きの扉の上には、剣と盾が交差しているような看板が取り付けられている。


 アルカが率先して中に入り、俺とリヒトも続く。


 中はそんなに人がいるわけじゃなかった。

 客人は二ペアくらいかな。


「まず武器と防具、どっちを先に見る?」

「先に防具を見てぇ。まず着換えたい」

「わかった」


 並んでいないカウンターに行くと一人の、恰幅がいい男性が声をかけてきた。


「いらっしゃい。どんな物をお探しかな」

「そうだな…………。男性用の魔法に強い服はあるか?」

「だったら、これはどうかね」


 おぉ、仕事が早いな。

 男が持ってきたのは、黒く長いローブ。白いフードが付いている。


「これは、確かにいいな。だが、ローブだけか。これだけだと少し怖い」

「そうか。少し待っていてくれ」


 そんで、また持ってきてくれたのは、柄物のシャツと黒いズボン。

 見た目は普通の私服だ。本当に防御力高いのか?


「それは物理、魔法。どちらからも守ってくれる優れものだ。動きやすさも兼ね備え、このローブとの相性もいいぞ」


 デザイン的にもおしゃれだが、そんなにいいものなら金、結構かかるんじゃないか?


 隣からアルカが覗き込み、おすすめされている服を見た。


「いいんじゃないか? これは二つでいくらになるんだ?」

「五十六ヘイトだ」


 …………えっと。え? 五十??


「五十六ヘイトか。カガミヤ、今回の報酬で買えそうだぞ、買おうか」

「まじ? 結構高くないか?」

「うん、めっちゃ高い。でも、今回の報酬は百ヘイト以上もらったから余裕だぞ? 服は本当に大事だから妥協しない方がいい」

「確かに、そうだが……」


 …………まぁ、いいか。

 これからダンジョンがメインの生活になるわけだし、アルカの言う通り妥協はしない方がいいな。


 俺は、今回おすすめされた服を買った。

 柄が付いているシャツに、ズボン。ついでにハイカットブーツも買ってくれた。


 試しに履いてみたところ、何も履いていないように軽く、底もしっかりしており滑りにくい。


 いい買い物をした気分だ。

 値段は高いけど、そこは目を瞑ろう。


「次は武器を買いに行こう」


 アルカの言葉に、隣にいた女性に目を向ける。

 優しく微笑んでくれた女性、話しやすそうだな。


 俺がその女を見ていると、隣から殺気…………殺気?


 視線を感じた方向には、ジト目を浮かべているリヒト。な、なに?

 

「…………だから、なんで怒ってるのさリヒト」

「いーえ。カガミヤさんはやっぱり女性が好きなんだなって思って」


 今のどこにそう思う要素があったんだか。

 まぁ、どうでもいいや。俺は早く武器が欲しい。早く選ぼう。

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