チート魔力はお金のために使うもの~人と関わるのが苦手な俺が、守銭奴転移を果たし純粋二人に囲まれ無双する〜

桜桃

初めての異世界転移

第1話 通帳を眺めて精神統一したい……

 俺は、時間が許す限り通帳を眺め、ニヤニヤしながら過ごす事を生きがいとしている一般会社員――――だったはず。だった、はずなんだ。


 はず、なのに――……


「大丈夫ですか!? 怪我は治したはずですが、動けますか!?」

「お前、一人でここのダンジョンに来たのか!?」


 目の前には、ファンタジー世界の住人が飛び出してきたのかと思う程、現実味のない服を着ている男女二人。


 一人は、手に剣を持っているアニメの主人公的な雰囲気を纏っている茶髪の少年。

 もう一人は、腰まで長い紅色の髪が特徴的の魔法使い少女。フリルの付いたスカートが揺れてますね、はい。


 ちょっ、ちょっと待って。

 お願いだから、待って。


 ま、まさか、仕事の帰り時、車に轢かれ意識を失ったかと思ったら、なんだよこれ、どこだよここ。


 体に走るはずの痛みがないと思って目を開けると、洞窟の中のような場所にいるし、見覚えの男女が見て来るし。


 し、しかも……。



 ――――――――グワァァァァァァァァァアアアアア!!



 ア、アニメかマンガに出てくるような二人の背後に、人間の数倍……いや、数百倍? はあるドラゴンが赤い目を俺達に向けている。


 あ、あぁ、えぇっと。

 怖い、普通に怖い。


 ドラゴンが怖すぎ、これ以上見てられない。

 目線だけを周りに向けてみるけど、うん、わかんない。


 ここは、洞窟内という解釈で、いいのか? 

 地面や壁の隙間からは苔が生えているみたいだけど……。


 いや、落ち着け俺、落ち着け……。


「あの!! もう怪我は治したはずなので、早く立っていただけると嬉しいです! もう、私は持ちません!!!」


 …………落ち着けない言葉を吐くな、魔法使い少女よ。


 何もかもがわからない俺にそんなことを言われても困るって。

 ちょっ、誰か助けて……。


「っ、あれ、右の中指に何かが当たるような感覚が……?」


 右手を見てみると、見覚えのないシルバーの指輪。

 結構高級そうなんだけど、これって何? 俺、買った記憶なんてないぞ?!



 ――――グオォォォォオオオオオアアアアアアアア!!!!



 っ、地響きが起こりそうなほどの咆哮!! 

 くっそ、慣れない感覚に吐き気が込み上げてきた。


 耳を塞いでも意味がない、頭痛までしてくる!!


「早く立て!! ワイバーンが突っ込んでくるぞ!!」


 えっと、ワイバーン?? 

 少年が早口で俺に言って来るが、何も分からない。


「ん? あれって――……」


 同じ場所から動こうとしないドラゴンの足元に、光る何かがチラチラ見える。

 もしかしてだが、動こうとしないんじゃなくて、動けないのか?


「〜〜〜〜〜もう限界!!!」

「っ、ずらかるぞ!!」


 二人の声にかぶさるように、先ほどと同じ咆哮が響き渡った。



 グォォォオォォォオオオオオアアアアアアア!!!!



 同時に、何かが壊れる音。



 ──────カッシャァァアアアアアン



 ドラゴンの咆哮と共に、何かが弾かれる。

 自由に動けるようになったドラゴンは、大きな翼を広げ赤い瞳で見てきた。


 足を浮かせたドラゴンの地面には、銀色の破片。輪の形を保っているのもある。


 今弾けたのは、鎖かなにかか?


 思わず見てしまっていると、腕を掴まれ後ろに引っ張られた──かと思うと、簡単に大の大人である俺を少年が肩に担ぐ…………担ぐ!?


「え、担がれた!?」

「なにボケっとしてるんだよ!! 死にたいのか!!」


 いや、え? 

 俺、百八十は身長あるんだけど。

 なに普通に肩に掲げてんの? この男、力半端ないんだが!?

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