★4 冬島唯誓
転校生、冬島
「揃ったことだし、そろそろ体育館へ移動したほうがいいな。準備できたやつから早めに向かえよ。それじゃ」
みんなはパッと立ち上がり、体育館へ向かう。数人の女子が冬島さんを誘い体育館へ向かったことで転校生が置いて行かれるということはなかった。
「紫苑、行こう」
「ああ。それよりあの子、この前の子に似てね?後ろ姿とか特に」
「まあ、最初見たとき俺も思ったよ。でもそんな偶然ある?確率バグってるだろ」
はははと笑ってごまかして俺は紫苑と体育館に向かった。本当は運命に感じていた。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
始業式後、教室に戻ってきてから三時間目の授業から開始することになっていた。今の時間は休憩時間みたいな感じでクラスメイトはほとんどが冬島さんの周りに群がっている。俺はあまり話すことが得意じゃないうえにあんなに人がいるのはちょっとなー。でも、冬島さんが本当にあの時の女の子なのかも気になるし。
チラッと冬島さんの席の方を見るとまだ囲まれていた。隙間から見える冬島さんの顔は少し辛そうで、もしかしたら質問攻めに遭ってるんじゃないだろうか。転校生が初日に席で質問攻めに遭うなんて話はマンガでもよく聞く話だ。本当に困っているのなら助けたいとは思う。でも、俺には勇気がなかった。あの中に入って彼女を連れだすなんてことはできない。自分の席から立つことさえできなかった。
そこにガラガラと教室の前方のドアが開く音がした。クラスのみんなが冬島さんの方からそっちに注目した。担任の古谷先生だった。教卓の前まで来て荷物を机に置いてから座れと一言言ったことですみやかに冬島さんから離れ席に着いた。
「えー、みんなもわかってるだろうが、3月にお楽しみの修学旅行がある。その説明をこの後する」
そう言って古谷先生は一番前の席に座る六人にしおりらしきものを渡し後ろに回すように指示した。
普通のクラスならここで騒ぐことが多いのだろうがここは古谷学級。誰一人として騒ぐことなく真剣に話を聴いていた。
「まず、日にちは3月の16から18の二泊三日だ。18日は土曜日だから二年生だけ20日の月曜日が振替休日となる。間違って来ても教室開かねぇからな。次に行先は例年通り北海道だ。……」
それからというものしばらく修学旅行の説明が続いた。行程のこと、服装のこと、持ち物のことそれから注意事項。行程に関しては一日目はスキー場でスキーかスノーボードの体験、二日目は午前中に一日目と同様の体験、午後は見学、三日目は班で一日自由行動となっていた。
「さて、次の話だ。班行動するときの班決めについてだ。ルールはいくつかあるが学年全員の中で自由に班を作ってもらう。人数は4人から6人の間。男女混合でも混合じゃなくてもいい。ただし、男女混合の場合は男女比が同等の場合のみ許可する。つまり、男女二人ずつか三人ずつしか班を作れないということだ。決まったらこの紙に班員の名前と班長を一人決めて学年の担任の誰かに提出すること。以上だ」
ここでクラスのみんながざわざわし始めた。一緒に組もうとかそういう話をしているんだろう。古谷先生は話が終わったことで残り時間は自由時間だという感じで何も言わない。
「あーらた!」
俺の右前の席である
「修学旅行の班、一緒に組もうぜ!」
「いいよ」
他に友達や組みたい人がいるわけでもないので即答した。でも二人しかいないからまだちゃんとした班になっていない。あと二人集めなくてはならない。紫苑はどう考えているのか。
「他はどうするの?」
「まだ、決めてない!」
やはりノープランか。このままの状態が続くと先生たちによって知らない人達が仲の良いグループにぶち込まれることになりそうだ。それはちょっと避けたい。かと言ってあてはないが。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます