☆5 おねぇさん
登校初日の夜、冬島家にて。
両親のいない家。これが
「はあ?あの時助けてもらった男の子と同じクラスになった⁉で、お礼言った?」
「まだ……」
英姫は溜息をついた。素直に思ったことをすぐ言えない妹に少し呆れているように唯誓は感じた。
「じゃあ、今から彼に電話してみる?着信履歴から番号わかるし」
唯誓は咄嗟に英姫に対して無理絶対無理と首を横に振りながらジャスチャーでバッテンを作った。
「かけまーす」
英姫は唯誓を無視して無理やりその番号に電話をかけた。
『もしもし?』
彼が電話に出た。英姫は唯誓に出るよう言ったが唯誓が拒んだ。
「もしもし。ごめんなさい、こんな夜遅くに」
実は夜と言ってもまだ八時。そんなに遅くはない。
『どなたですか?』
どうやら彼は相手が誰か知らずに取ったらしい。私にはできない。そう思った唯誓。
「それは失礼。この間は妹にスマートフォンを貸していただきありがとうございました」
『ああ、あの時の。いえいえ。全然。そのあとはちゃんと会えたということでよかったですか?』
「ええ。あなたのおかげでね。それでお礼をしたいんだけど、いつ空いてる?」
『お礼なんて。お気持ちだけでいいですよ』
「いや、させて。このままだとアレだから」
『じゃあ、えっと、明日とかどうです?学校終わりならいつでも大丈夫です』
「じゃあ、そうしましょう。妹も連れてくから。場所は美空駅前の喫茶店でいいかしら?」
『はい。大丈夫です』
「また明日会いましょう」
『はい』
「『失礼します』」
二人はほぼ同じタイミングで通話を切った。
「ということで唯誓、明日の学校終わり彼と駅前の喫茶店に行くからよろしく」
「おねぇちゃん?また勝手に決めて」
「あんたが言えないからでしょ」
唯誓は英姫に言われ苦虫を噛んだような顔をしていた。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
翌日、美空高校2-1教室、左から3番目前から5番目の席。つまり
「え?あの時の子のおねぇさんから昨夜電話がかかってきた⁉」
「うん。で、今日お礼するとかなんとかって会うことになった」
「美人か?美人なんだよな。それ俺も行っていいか?」
「電話だけで美人かどうかわかんないって!それにお前あの時ちゃんと会ってないから来るのはダメ」
「じゃあ、新汰の後つける」
「ストーカーめ」
紫苑はほんとにストーカー行為するのか。冗談にも聞こえるけど、そういうの聞き分けれないんだよなー。まあどっちでもいいか。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
放課後、待ち合わせの駅前の喫茶店に入る。扉を開けると上にあるベルが鳴り入店を報せる。扉を閉めると心地よい温度の室内。暑すぎない店内。周りを見渡すとおねぇさんっぽい人がこっちを見て手を振っている。俺はまっすぐその人のいる席まで行ってみた。
「君が先日、妹を助けてくれた子?」
「おそらく」
なるほどなるほどと頷いて席に座ることを促すおねぇさん。とりあえず、おねぇさんの対面に座った。
「先に確認しておくね。この番号は君の番号で間違いない?」
「そうですね。俺の番号ですね」
「ごめんね。唯誓まだ来てなくて。もうすぐ来ると思うんだけど」
「ところでおねぇさんは――――」
「まだ、名乗ってなかったか。私は冬島
「あ、はい。えっっとー、え、えりかさんはなんで俺が入ってきたとき俺がそうだと思ったんですか?」
「あ、それはねー。唯誓が君と同じ学校だって聞いてたから制服で」
直後、入店時のベルが鳴る。俺はお店の扉の方をチラッと見る。そこには昨日転校してきた冬島さんが周りをキョロキョロしていた。
遅れてえりかさんも同じ場所を見る。
「来たねー」
えりかさんのこの言葉で気づいた。というか言われるまで確信まで自分の脳が行かなかった。転校生の冬島さんと冬島えりかさん。あの時の子に似てるとは思ったけど。
「あ、いたいた。手くらい挙げてくれてもいいじゃん!」
「昔からそういうの唯誓、嫌だったからしなかったのよ。ていうか、遅い」
「ごめん。今夜ご飯作るからそれで許して」
「だって少年。食べてく?」
「え?え?」
ついていけなかった。情報量が多い。えっと?あの時の子が転校生で、ということは転校生とえりかさんが姉妹で、教室では見てない雰囲気があって、今夜冬島さんの手料理を食べる?
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