第11話

村を出て、リュンヌに向かう僕たち。

途中に森があり、入っていく。

せっかく森から出てきたのにまた森かぁ。

まあ、あの時は早く出たいって気持ちが強くてあんまり周りを見てなかったし、森の景色もちゃんと見れるってことでいっか。

時々出てくる魔物を、アメジスさんが瞬殺してくれたりしながら森を進んでいっていた。

そして今は、少し休憩をしている。


「なんだか、草原にいた時より森の方が魔物がよく出てる気がする。」


ゴブリンを見た程度で周りを見渡しても草原には魔物らしきものはいなかった。


「それは木に囲まれているせいで魔素が溜まりやすいんだろう。」


「魔素?」


「魔素は空中にある粒子だ。魔素が一定量溜まると魔物になるんだ。人間の魔力の源でもある。」


「じゃあ魔素がないと魔法が使えないんだ。」


「そうだな。人間は魔族などと違い、魔素を吸収し、魔力へと変化させる。私たちは体内に魔力を生成する器官があるから魔素を吸収しなくとも使えるんだ。」


「なるほどねぇ。」


そんな風になってたんだ。

僕って色々調べてたけどまだ全然知らないことが多いな。

まあ、あの国がそういう情報が少なかったってのもあると思うけど。


「僕も魔法使ってみたいなぁ。」


せっかく魔法がある異世界に転生したのに、それらしい事ができてない気がする。

前までは、魔王の呪い何てものを信じてたけど、魔王の呪いの一つがないことがわかった今、もう一つの呪いもないと思っている。

だったら僕も魔法が使えるんじゃないかな。

そんなことを考えていたら、アメジスさんが、


「残念ながらサフィニアには魔法は使えない。」


「え。」


僕は魔法が使えない?

どういうことだろう。


「前にも言ったが、魔力を放出できないと魔法は使えない。サフィニアにはその放出する器官がない。」


「え、え、じゃあ本当に僕は使えないの?」


「あぁ、使えない。サフィニアは私たちに体の構造が近いみたいだ。自身の体内で魔力を作ることが出来る。もしかしたら、その放出する器官がないのはその影響かもしれないな。それに人間にしては魔力が多い。なんなら、魔族でもなかなか見かけない程の量だ。」


そんなに魔力が多くても、使えないなら意味が無いよ..。


「あれ?僕って魔族とかと似た体なんだよね?それなら僕も爆発するんじゃ....。」


「そうだな。人間は魔力を作れない代わりに、許容量を超える魔力は作られない。魔族などは自身で作れるが、使わなければ増え続け、いつか許容量を超える。サフィニアも私たちと同じで、使わなければそうなるだろう。」


え、えぇ!!そうなったら僕いつか死んじゃうよ!

だって自分で使えないんだもん!!


「まあ、それを解消するには二つ方法があり、一つは魔道具を使うことだ。」


そっか、そのための魔道具があるんだった。


「そして二つ目は相性が良い者と繋がることだ。」


「相性のいい人?繋がる?」


そういえば、前も相性の話してたね。

繋がるってどういうことだろう。


「相性の良い者に触れることで繋がることが出来る。繋がると二人で一つの体と認識され、魔法を使えない者は、使えるようになり、相性の良さで魔法の効果も上がっていく。」


「それってすごいことじゃん!じゃあ、魔物と戦ったりする時は相性のいい人と繋がった方がいいってことだよね。」


「それが出来たらいいが、お互いに繋がるというイメージが一致していないとできない。少しのズレでも繋がれない。」


「繋がるイメージ?」


「例えば、二人の体は糸の形をしていてそれが固く結ばれているだとか、ピースがピッタリとはまるだとかとにかくなんでもいいのだが、同じ想像をしていても結び方やピースの形が違うなどでも繋がれない。」


なかなかにシビアなんだなぁ。

じゃあ戦ってる間にそれを合わせるのは慣れないと難しそうだ。

ん?じゃあ昨日言ってたアメジスさんと僕の相性って?


「昨日言ってた僕とアメジスさんの相性っていうのは?また別の話?」


「いや、同じ話だな。言っただろう、私とサフィニアはかなり相性がいいと。お互いに合わせなくてもイメージがあっているのか、そのようなことをしなくとも良いほど相性が異常にいいのかはわからないが、相性がいいことには変わらない。」


僕とアメジスさんの相性がいい....。

それも、普通よりかなりいいって。

それってなんだか........。


「運命みたいだね。」


「フッ、そうだな。」


アメジスさんの手をぎゅっと握ってみる。

やっぱり僕には繋がりがわからないけど、きっと繋がれているのだろう。

すごいいいなぁ、それ。

好きな人とこういう形で相性がいいってわかるの。


「こうしていれば、サフィニアと繋がれて、そしてサフィニアは魔力が増え続け死ぬこともない。」


こうしてるだけで幸せな気持ちになれるのに、更に魔力のキャパオーバーで死ぬこともなくて、アメジスさんも癒せる。

一石何鳥もあるよ!?

こんな幸せってあっていいのかな!?いいよね!


「さて、サフィニア。そろそろ先に進もうか。」


「うん、いく。」


なんだかふわふわとした気持ちだ。

そして手を繋いだ状態で、森を歩く。

途中で、夜になって野宿をしたりもしつつ、三日程かけ

魔物を倒したりしながら森をぬけた。

この三日間、手を繋いだりしていてほぼ僕たちは離れなかった。

こんな状態でも、魔物を瞬殺できちゃうアメジスさんすごいなぁ。

そして草原をまた歩き、やっと国らしきものが見えてきた。


「アメジスさん!やっとついたね!」


「そうだな。」


どんな場所なのかドキドキしながら、僕たちは王国に近づいていった。

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