第6話
視界が戻ると、僕はアメジスさんの方を見た。
アメジスさんは驚いたような顔をしていた。
「アメジスさん、大丈夫?」
「あ、あぁ。」
困惑してるアメジスさんかわいい....じゃなくて。
どうやら、思った通りアメジスさんの傷が治っている。
よかった....。
本当によかった.....。
安堵したためか、腰が抜けてしまった。
そして頬に涙が流れる。
「泣かないでくれ。サフィニアに泣かれるとどうすればいいかわからなくなる。」
「だって!本当に死んじゃうかと思ったんだもん!!」
泣いている僕をアメジスさんは抱きしめてくれる。
アメジスさん、優しい.....。
僕はアメジスさんを抱きしめ返す。
そしてアメジスさんも治ったとはいえ、血が沢山でていたのでしばらくここで休むことになった。
その間僕はアメジスさんの腕の中を堪能していた。
するとあることに気づく。
「アメジスさん、確かここに魔法陣書かれてたよね?」
僕はアメジスさんの腕を撫でる。
「......消えているな。」
え、それってつまり...。
「や、やった!やっと解除できたんだよ!」
「そうだな。」
アメジスさんが僕に微笑んでくれる。
もしかして、さっきの光で傷だけじゃなくて従属の魔法陣も消えたのかな?
「あ、でもパール割れちゃった..。」
「パール?」
「うん、これ。前寄り道したって言ったでしょ?そのときに魔道具屋さんがあってこのパールを見つけたんだ。アメジスさんの目の色と似てるから気に入ってたんだけど..。」
「...少し見せてくれ。」
「うん、いいよ。」
アメジスさんに割れてしまったパールを渡す。
「それにしてもこのパール、店員さんは役に立たないって言ってたけど、すごい魔道具だったね。謙遜ってやつなのかな?」
「....いや、魔道具の魔法陣自体は大したものじゃない。」
「え?でも現にアメジスさんに効果があったよ?」
「この魔道具の魔法陣は使用者の魔力を吸収し、魔力を放出するというものだ。人間以外の種族が魔力を体内から放出しないと魔力が増え続け、体が耐えきれず体内から爆発してしまう。そのため魔力を自力で放出できないもののために作られた魔道具だ。」
「つまりほとんどの人は自分でできるから必要ないってこと?」
「そういうことだ。」
なるほど。
確かにあまり役に立たないな。
あれ?でも....。
「じゃあ、どうしてアメジスさんは治ったんだろ?」
「おそらく、サフィニアがその魔道具を使い、私に魔法をかけたのだろう。」
「え、僕が?」
僕がどうやってアメジスさんを?
そういえば、前に図書館に行ったときに見つけた本に、凄い治癒魔法の使い手がいたって書いてあったような。
もしかして、僕もそれに近い能力を持っているのかもしれないってこと...?
僕はそのことをアメジスさんに話してみる。
「私もその話は知人から聞いたことがある。1000年程前に各地で治癒を施していたものがいたと。その者の治癒の能力は凄まじく、どんな状態のものでも治してしまうらしい。」
僕が本で見たのと大体同じ内容のようだ。
「それにしても1000年前かぁ...。1000年前といえば魔王がいた時代だよね。魔王と僕は同じ色だし、何か関係あったりするのかな。」
そう僕が冗談混じりに言ってみるとアメジスさんは、
「案外本当にあるかもしれない。」
「え?」
「私も黒髪の属性はわからない。もしかするとその属性の影響で治癒魔法が得意なのかもしれない。」
確かに可能性がないわけではないのか。
「でもそれじゃあ魔王本人が大陸を回ってたってこと?一応王様なんじゃ...。」
「魔族は基本自由気ままだからな。その王だというのであれば、魔族一自由な者だとしても不思議ではない。」
そうなのか..。
でもこの説を信じると、魔王はいい人ってことだ。
つまりこの国は嘘を言っていることになる。
どちらにしても、僕がやることは決まった。
それは、アメジスさんが幸せに暮らせる場所を作ること。
できるかどうかは、わからないけど行動しないよりは全然いい。
「あのね、アメジスさん。僕やりたいことができたんだ。だから僕、旅に出ようと思って。それでね、断ってもいいんだけど僕と一緒に...。」
「ついていく。」
「ふふっ、そんな食い気味に言わなくてもいいのに。でもそう言ってくれてよかった。」
「私はサフィニアに嫌だと言われても傍を離れるつもりはない。」
「アメジスさん..。嬉しい......!」
アメジスさんをぎゅっと抱きしめる。
アメジスさんも抱きしめ返してくれてとても幸せだ。
「サフィニア。」
「なぁに?」
「サフィニアのやりたいことが終わったら..私と結婚してくれないか。」
「..........っ!もちろん!」
そして僕とアメジスさんはキスをした。
先程よりもずっと長くて今までで一番幸せなキスだった。
しばらく、アメジスさんと二人の時間を楽しんだあと僕とアメジスさんは結界の外へ行くことにした。
「アメジスさん本当に大丈夫かな....。」
「あぁ、私が結界の外にいたときには人間が住んでいる村があった。死の呪いなんてものはない。」
「アメジスさんが言うならそうなんだろうけどやっぱり不安だなぁ。」
「やりたいことがあるんだろう?いいのか出なくて。」
「うぅ..。僕頑張るよ!」
「そうか。じゃあ..。」
「わっ!」
アメジスさんが僕を抱き上げる。
するとそのまま結界のある方へ走っていった。
「ア、アメジスさんはやい!」
「もう少し我慢してくれ。」
凄いスピードで結界に向かっていく。
ジェットコースターが苦手な僕には少し辛い。
「サフィニア、結界が見えてきたぞ。」
「え!あ、本当だ!」
僕たちの前に薄い壁のようものが見える。
きっとあれが結界なのだろう。
アメジスさんがスピードを落とし、そのまま結界の前で止まる。
「サフィニア、準備はいいか。」
「だ、大丈夫!行こう!」
「ああ。」
アメジスさんが手を繋いでくれた。
まあ、アメジスさんがいるならどうにかなるかな。
そう僕は思い、アメジスさんと一緒に結界の外に出た。
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