第1話

突然だが、僕サフィニア・ノワールには前世の記憶がある。

前世での僕は義母からの虐待や学校でのいじめに耐えられず、自殺をした。

そして今から十年ほど前、六歳の頃に前世の記憶を思い出した。

最初は少し困惑したが、サフィニアとして過ごしていくとサフィニアと前世の僕の扱いは、さほど変わらなかった。


なぜ今世の僕がこのような扱いを受けているかというと、この世界には魔王がいた。

いたというのは、既に勇者に1000年以上前で倒されているのだ。


まぁ詳しいことは置いておいて、ここで問題なのが魔王の見た目である。

魔王は黒髪黒目という日本であれば、珍しくない見た目ではあるのだが、この世界ではとても珍しく黒髪だけでも200年に一人、長ければもっと見られないと言われている。

それに加え、黒髪よりは数は多いが、黒目もなかなかに見られない。


そんな珍しい黒髪と黒目をあわせてもって生まれてしまった者は、まあ魔王の生まれ変わりなんて呼ばれてしまうのも無理ないわけで...。

そしてここまで説明すればわかるように、僕はその珍しすぎる黒髪黒目なのである。


僕、家族運に恵まれてないみたいだな......。

まあ僕にはアメジスさんがいるからいいか。


アメジスさんとは、父親が買ってきた魔族の奴隷である。

この国では魔族、獣人、エルフなどの他種族が差別されており、この国にいるもののほとんどが奴隷である。

そして、貴族の間では自分の奴隷の顔の良さや躾で競ったりするらしい。

僕の家も一応は貴族ではあるが、貧乏貴族というものでお金がないのだが、僕の家族は貴族であることに誇りを持っているために、無駄にお金を使ってしまうのだ。

まあ、僕には関係ない話だし、それのおかげでアメジスさんに会えたのだから文句なんてない。


それにしてもアメジスさんは寝顔までかっこいい。

アメジスさんの寝顔を眺めていると、


「サフィニア。」


アメジスさんが起きたようだった。


「アメジスさんおはよう。」


「あぁ、おはようサフィニア。」


アメジスさんは今日もかっこいいなぁ。

気持ちが抑えられず、アメジスさんに抱きつく。


「どうしたんだ?サフィニア。」


「今日もかっこいいなって思ったら、つい。」


「そうか。サフィニアは今日も可愛いな。」


朝からそんな風にイチャイチャとしている僕とアメジスさん。

ちなみに僕とアメジスさんはまだ付き合っていない。

アメジスさんは、奴隷という立場上従わせるために従属の魔法が書かれた魔法陣をつけられているため、それを外すまでは僕と付き合えないと言っている。

だが、我慢できなくなってキスをしてしまってからはキスだけは毎日するようになった。

できれば、早く魔法陣を解除できたらいいなぁ。


「サフィニア、今日は何するんだ?」


「あ、そうだ!今日は街に出ようと思ってるんだ。本当は今日一日アメジスさんと一緒にいたいんだけど、珍しく家族がいない日だから調べものをしたくて..。ごめんね、アメジスさん。」


「私のためにやろうとしていることだ。引き止めることなんてしない。いっておいで。」


引き止めてくれた方が嬉しいけど、アメジスさんのためだし頑張ろう!


「アメジスさんじゃあ今日もお願いしてもいい?」


「あぁ、もちろん。」


僕はの見た目では街に出れないので、アメジスさんに幻術魔法をかけてもらう。

アメジスさんが奴隷であるのに魔法が使える。

本来奴隷には、従属の魔法陣とともに魔道具と呼ばれる魔法陣を刻まれた道具である、魔法封じの首輪をされる。

だが、アメジスさんは魔力量が多いらしく、出回っている首輪では魔力に耐えきれず壊れてしまうらしい。


アメジスさんに髪の毛と目の色を変えてもらった。


「ありがとう!アメジスさん!じゃあ僕行ってくるね。」


「あぁ、怪我しないようにな。サフィニア。」


「うん!」


そして僕は、街に向かっていった。

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