第24話

《めいちゃん、おかえり。》


「ただいま。あー、疲れた。」



 心の小部屋に招き入れるのは限られた大事な人だけなのです。

 ただ境界線が曖昧な瞬間もあって、シャボン玉が弾けた時心の1番柔らかい部分を見せれるの。

 矛盾してるって?そこはご愛嬌で。



《チョコレートケーキ食べる?》


「うん!お願いしていい?」


《大分久しぶりじゃない?》


「そう?ちょっと聞いて欲しいなって思って」


《どうしたの?話してみて》


「この間ね、はっとした事があったのね」


《会話のすれ違い?》


「うん、まあそんなとこ。上手く伝達されてなかったみたい」


《どんな感じで?》


「私が約束を破っちゃったんだけど、そこは彼が許してくれたの」


《うん》


「私に対する信用は無くなってくるけどねって言われて、約束は守る方法はあったよねってとも言われたの」


《それで?》


「私がどう言う事?脅してるの?って言ったのね」


《うん》


「脅し?何でそんな解釈になるんだ?って言われたの」


《それで何て言ったの?》


「俺の信用を失いたくないなら言う事聞けっていう意味で言ってるのかなって思って、違うの?って聞いたの」


《相手は何て言った?》


「そんなこと言ってないよね、偏屈すぎだよ!って言われて、私も確かにって思って笑っちゃった」


《それで君は気づいたんだろ?》


「うん」


《それでどう思った?》


「薄々気づいてはいたんだけど、みないふりしてたんだよね。それをやめようと思ったの」


《じゃあ今度は裸眼でしっかり見てあげればいいよ》


「うん」


《君は自分では認めないかもしれないけど、誰よりも繊細だよ。

意図せずとも流れてるその涙が何よりの証拠だろ?》


「父親の思考・言葉に脳内変換されるの」


《それに気づいた時点で、もう大丈夫だよ》


「そうかも」


《ケーキ食べな?コーヒーも持ってくるから待ってて》


「うん、ありがとう」



 表面の光沢の美しさに癒され、断面の重圧感をも堪能しながらフォークを刺した。

 チョコレートの甘さは人を瞬時に幸せにすると再確認しながら。

 温かいコーヒーは、張り詰めていた気持ちの糸を緩める。




 ふと想いを馳せた。


 やっぱり人は、幼い時に1番身近にいた男女を通して世界を見る。


 私にとっての右のレンズが父親で、左のレンズが母親だった。


 そろそろ眼鏡を外して、

 自分の眼で世界を見る必要があるようだ。




「ねえ、あなたの恋愛観は?あなたはどう愛すの?」


《それを俺に聞く?》


「うん!だってあなたは私でしょ?再確認したくて」


《俺の愛は海だね》


「ふふ、なるほどねー。」


《俺は何も否定したくないんだよ》


「確かに!否定しないね、なんで?」


《君が悩んで考えた選択に、行動にとやかく言いたくないから》


「うん」


《今のままの君で最高だし、君が変わりたいと思って変わった後の君も最高だ》


「私もあなたにそう思ってるよ」


《本当の核の部分。君のその魂の煌めき、そこから溢れて発生した全てのものを等しく愛してるから》


「私達はこんなに分かち合えてるのにね」


《歴が違うだろ》


「それにしたって、やっぱり幸せよ」


《俺達が仲良くなきゃ、健全な自尊心が育まれないだろ》


「ねえ、じゃあ私達の前世の話をしようよ

あの時どう思ってたか一緒に答え合わせしよ」


《でも、そろそろ行くだろ?》


「はぐらかした!行くけど、、、」


《じゃあ次の機会だね。俺はずっといるから》


「分かってる。だから私はどんな時でも淋しくないの、ありがとう!じゃあね!」

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