第20話

《おかえり。》


「夢の夢は終わって今は普通に夢?」


《まあそう言うことにもなるね。

 君のための旅行は楽しんでくれたかな?》


「なんとも言えない気持ち。

 感情の置き場に困るわ。」


《揺さぶられれば揺さぶられる程強固になるからね。》


「高級な人間の置物のような

 生身の絵画のような、そんな感じ。」


《思う存分美を追求するといい。》


「そんなにすんなりと折り合いをつけられないわ。折り紙みたいに綺麗に折れたならいいのにね。」


《でも君はそれを望んでるだろ?》


「そうね、そうかもしれない。

 額縁通りに受け取れないもの、捻くれてるから。」


《さしずめ現代の人魚姫だね。》


「どう言うこと?」


《君は何事も受け入れすぎる。》


「幾つものしょうがないを飲み込んできたもの。」


《しょうがないが喉に絡みついて本音が鮮明に聞こえない。曖昧で濁る。

ぼやけた物をいかに立体的に見せるかに躍起になって、意味があるようで無い音が続く、BGMのように。》


「涙の度数は少しだけ多いかもね。」


《もう十分だよ。そして君は段々と君に戻ってる。》


「私ね、言葉遊びが昔から好きなの。

 感情を抽出して五感で感じられる。

 語感が弾けて色付く

 声が、トーンが、抑揚が、選んだ言葉が、その癖が内側を浮き彫りにする。」


《知ってるよ、君は自信がないと言うかもしれないが今も昔も主役に相応しい。》


「あなたは私に絶対的な自信をくれる。

 言葉だけじゃなくて、存在で私を肯定してくれてる。なんでこんなに胸がいっぱいになるのかしら。」


《俺が3数えたら、君が君を生きるための舞台に戻るよ。》


「わかったわ。」


《さよならだけが人生じゃなかっただろ?》


「うん。その方がずっと楽しい。」


       3・2・1

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