第13話

「あら、そんな所に突っ立ってどうしたの?」

 

 芳しい植物が咲き誇り、福音の音色が聞こえてきそうな圧倒的な祝福が漂ってきた。

 生の香りか死の香りか全く判別はつかない。


《いや、なんとなく。》


「あなたも難儀ね。

 それに今ぶち当たってるんでしょ?」


《俺なりの正解が見たいんです。》


「あなたは優しいわね。このまま急速に2人仲良くなっちゃったら、現実でもあの子いい恋愛しちゃうじゃない。」


《リンクしてますからね。》


「なーんだ、気づいてるわよね。」


《何もしなかったら俺たちの距離も縮まりませんから。》


「まあそうだけど、ハッピーエンドのその向こう側が見たいんでしょ?」


《あんなに1つになりたいと願ったのに、

なったらなったで、まだ違う悩みが出てくるものですね。》


「真面目ねー。あなたが願ったことでしょう?

でも最後天井から見る景色があるんだから悪くないんじゃない?」


《堂々巡りはやめにしたいんです。》


「そうしてもらわなきゃ困るわよ。

人間はだいたいそれで一生を終える。」


《寿命が短いんですよ。》


「何言ってんの、何回もやってるじゃない。

世界平和のスケールで悩むなら分かるけど、

あんた達自分の事に必死でそこまで手が回らないじゃない。」


《だから俺は個の問題を、今クリアするんです。》


「いいんじゃない?そろそろ。

 人間は思ったより苦しみすぎた。」


《利己の延長線上の先の利他を、一緒に生きたいんです。》


「急にロマンチックね。」


《・・・。彼女デートなんです。》


「あら、じゃあそのまま入ってればよかったのに。」


《このタイミングって事は俗に言う彼女のいる世界の運命の相手、現世で最後まで愛する相手って事ですよ?》


「素敵じゃない、私はわくわくするわ。」


《こっちは気持ちをまだ昇華できませんよ。》


「そうねえ。

 私は次の展開が楽しみだけどね♡」


《今の所、僕は気が進みませんけど。》


「それも含めて楽しんじゃいなさいな。

完璧ならあえて何もする必要がないの。

思って実行した瞬間、全てが可能で、全てが手に入るんだから。」


《でも俺たちはみんな不完全な存在、それが鍵っていう事ですよね?》


「その不完全さと言うギフトをもらって来てるんだから、あえてする必要のある世界にいるわけでしょ?」


《なんとなく分かります。》


「思考停止は終わったのね。

幸せになる為に願って生まれてきたのに

自分の幸せが何だったか思い出せないままのパターンもあるでしょ?

そんなの勿体無いじゃない?」


《みんな一生懸命なんですけどね。

 まやかしの幸せに捕まっちゃうんですよ。》


「不幸が幸せならそれも楽しめばいい。

ただ本意でない生き方は見てて悲しいわよ。

たんたは本物を知ってるの?」


《俺には信じてるものがあります。》


「いいんじゃない?

久しぶりに熱くなっちゃったわよ。」


《元からじゃないですか?》


「話してて整理されたでしょ?

そろそろ行ったら?」


《そうですね。ありがとうございました。》

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