第3話
私のユートピア。
それを作るために生まれてきたの。
楽しさに浸りきって味わい尽くしたいの。
3月のまだ肌寒い時期、トレンチコートを羽織ってお気に入りの曲をエンドレスで流しながら電車に運ばれてた。
「ああ、何かが始まっていく。」
そんな予感がしたの。
鼓動を感じて、私の中に芽吹いた何かを確かめるのが楽しみで、あの感覚をまだ覚えてる。
目があった時の瞬間の顔を思い出した。
とっても可愛かったの、あたしの中の女が疼いた。
「なぜそんなに瞳孔が開いてたの?」
きっと聞いたら、たじろぐんだろうな。
それとも覚えてない?
そうだったら殺しちゃうかも。
私が気づいてないと思って所作・表情・話してる内容細部に至るまで、相当観察されてた。
まるでモルモットになった気分で楽しかった。
きっと私より私のいろんな表情を、いろんな角度で堪能してる。
あなたと出会ったおかげで、自分の中に深く深く沈めた。
そしたらその都度、色々な自分に浸れるの。
始めましてもあれば、久しぶりもある。
そしてさよならも。
私は恋に落ちたの。
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