第2話



モノローグ 


 ある女が死んだ。

 年季の入った箪笥の奥から一枚の写真が見つかった。


 その白黒の写真はある女の息子の婚礼の時の写真で、主役2人と両家の親族が写っている写真だ。

息子とその嫁のおめでたい写真をいつまでも残している微笑ましい一コマだ。


 しかしその写真は主役を挟んで両家の間から破られていた。

 慎重に破ったことが伺えるその写真は一瞬の感情任せにやったことではないのだという意志すら感じさせる。

 しかも破った写真は綺麗に残されていた。


 人間の意志というものはたったその行動一つ取っても伺い知れる。

 呆気に取られた。凄まじいなと思った。

 

 「決して交わってやるものが」という強い誓いの儀式のようで、破られた平行線の写真がそれを暗喩してるようだった。

 捨てないんだなっと思ったし、なんならボケて写真の存在すら忘れてる可能性に賭けたかったが何十年も綺麗に保存されていた様にあえてだなと思ったし、その執念に感心すら覚えた。

 むしろ隠すつもりなんて無かったのかもしれないし、むしろはやく見つけて貰いたかったのかもしれない。


 このエピソード以外もすったもんだあったがその時、この女の旦那はそれを間近で見ていて何を感じていたのだろうとそこが気になった。

 

 人は好きな相手にはなるべく自分のいいところを見せようとするのが一般的だが、

 一定年数を超えたからなのか元々のタチなのか、はたまた両方か。

 私はそれでも愛してくれる?

と試しているかのようにも思えた。

 人間のエゴや邪な心、嘘や暴言幼稚な行動など、見せてぶつけていた。

 理性的な理想像の人間だけでなく本能的な凶暴で強烈な生身の部分も解放していた。

 全部含めて私なのそれでも愛して、と。


 それもまた1つの愛の形なのかも知れない。

当人同士が分かり合っていれば、外野がその形にとやかくいうのは野暮なことだ。

(まわりは迷惑だと思う瞬間もあったが)


 誰もがなるべく隠したいような、恥じる気持ちが出てくるような、衝動を持っている。

 彼女を通して自分の中の衝動見えた。

人はなにか(心の琴線など)が刺激されると感情が並み立つ、並み立つということは自分の中にある「それ」と共鳴しているから。

 一定の感情や衝動を過剰に反応する人もいるが、過剰な否定は肯定とも捉えられる。


 その一件は、なんとも言えない感情を沸き立たせてくれた。

 


 特異な人であったなと、ふと思った。

と同時におもしろい人だったなとも思った。




 Q.女はなぜその写真を死ぬまで手元に置いて置いたのだろうか。



 A.彼女はもうここにはいないので、永久に解らない。



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