第48話

 イスカリオテは僕に殺されて、満足げに死んでいった。

 お姉ちゃんも僕に殺されて、満足げに死んでいった。


「……クソが」


 もやもやも、虚無感も、抱えさせられたのは結局、僕ばかりだ。

 僕だけが、ただ僕だけだけが、何もわからぬままにこの場に取り残されていた。


「……お姉ちゃんを、守るのは僕の最も大きかった指針だったんだぞ」


 訳も分からず、一方的に情報だけ押し付けられて、変なものまで押し付けられて。

 それで、お姉ちゃんも殺す羽目になって……何なんだよ、これは。

 何なんだよ……これは、本当に。


「あ、アークライト」


「……ん?」

 

 内心で、どうしようもない、あて先もない怒りだけを抱えていた僕はリーミャに声をかけられ、そちらの方を視線を向ける。


「ど、どうしたの……?その姿、というか……大丈夫、なの?」


「えっ?何が?」


 これ以上ないほどの驚きの視線を送ってきているリーミャ。

 その彼女に対して、僕は首をかしげる。

 どうして、そこまで彼女は驚いているのだろうか?


「い、いや……気づいて、いないの?その体、なんか、女の子みたいになっているけどぉ……」


「えっ……?」


 リーミャの言葉を受けて僕が自分の視線を下に送ってみれば、視界を埋め尽くすのは溢れんばかりのおっぱいだった。


「はっ?」


 まずは大きくなった自分の乳房に触れて、次に髪の方へと手を伸ばして、ずいぶんとそれが伸びていることを知って。


「えぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええええええ!?」


 自分の体が女となっていることに気づく。


「うっそ……」


「え、えぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええええええええ!?」


「そ、そんなことあるの?」


「は、はわわわわわ」


 えっ、いや、えっ!?ま、マジでっ!?

 視界の端に映る髪の色も変わっている。

 本当に、僕の見た目はずいぶんと変わってしまっていた。

 その事実を前に、僕も驚いていたし、また、リーミャたちも驚いていた。


「し、下の方は!?おちん〇んはまだあるんですか!?」


「あ、う、うん……」


 そんな中でのアイの言葉に僕は頷き、慌てて自分の股の方の確認に行く。

 この時は、慌てていて急なアイの衝撃的な言葉のことなんて考えてもいられなかった。


「えっ……」


 そして、その手を伸ばした先にあったものも、大きな大きな驚きのことだった。


「ふ、二つある……?」


 自分の股。

 そこには凹も凸も、両方ついていた。

 僕の手は感じたこともないような感触を、感じ、それを呆然としている脳の方に送っていた。

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