第46話

 色々と思うところはあった。

 それでも。


「……うん」


 リーミャたちが動いている中で、リーダーを自負して名乗っている僕がいつまでもくよくよしているわけにもいかない。


「行けそう」


 アイが打ち込んでくれた薬。

 それは抜群だった。


「あらら」


「……なるほど。それですか。まだ、持っていたのですね」


 僕は自分の中にあった邪神の力を完全にコントロールすることが出来ていた。

 先ほどまで、自分の中で暴れていたものは何のその、である。


「……何かしらの、デメリットはありそうだが、今はあえて気にしないこととしようか」


 ここまできれいに馴染むと違和感が凄いが……今は、いい。

 そんなことよりもリーミャとマリアのことだ。


「変わっていいよ」


 お姉ちゃんと戦っていたリーミャとマリア。

 二人がかりであっても、軽く遊んでいるだけという雰囲気を醸し出していたお姉ちゃんにまるで歯が立っていなかった。


「へぶっ!?」


「……やっぱり、僕の知る姿じゃないんだね」


 リーミャとマリアを軽く遊んでいたお姉ちゃんとの距離を一瞬で詰め、そのまま蹴り一つで思いっきり吹き飛ばしてやる。

 僕の全力の蹴り。

 ただし、それであっても、お姉ちゃんを仕留めきれたような感じは感じられなかった。


「ここまで能力が向上するとは……少し、想定外です。それに、それだけの身体能力の向上がありながら、平然とその身を使いこなしている。それもまた、驚異的と言えるでしょう」


「お前の教育の賜物だよ」


「それは実に素晴らしい……やはり、君であれば私を殺せそうです」


「当然だ」


 体が軽く、想像以上に強く動く。

 僕はイスカリオテとの距離を詰め、手刀でその胴体を


「いけるな」


 何となくの勘。

 何となくの直感でしかなかったが、僕はかのイスカリオテを問題なく殺せるとその一撃だけで判断する。


「……人類を頼みます」


 そして、それは僕の前で笑みを浮かべたその男も同じなのだろう。


「ほざけ、ひとごろし」


 憎たらしいほどに、満面の笑みを浮かべる男の脳天を僕は一切迷うことなく貫き、確実にその命を終わらせてやる。


「……クソが」


 一人、満足して死にやがって。


「……さて、一人だ」


 既に殺した奴のことなんて考えている暇はない。

 僕は視線を先ほど、蹴り飛ばしたお姉ちゃんの方へと向ける。


「……本当に、どれだけの力を隠し持っていたことか」


「言ったでしょ?女は秘密が多いほど魅力的って」


「男、って話だろがっ」


「女としての方が長く生きているから、もう私はただのレズみたいなものよ」


「……あっそ」


 自分の蹴りを受けてなお、ケロッとしているお姉ちゃんに対して、僕は刀を構えることで返すのだった。

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