第45話

 お姉ちゃんとイスカリオテの話を聞いていた途中で。


「おぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇえええええええええええええええええええッ!」


 僕は自分の中から急に湧き上がってきた、拒絶感とでも言うべきものを受けて胃の中のものをほぼ反射的にぶちまけてしまう。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 先ほどの、どうしようもないような自分が自分でなくなるような、書き換えられていくような感覚とはまた違う。

 

「……クソ」

 

 じわじわと何かを蝕まれていくような非常に不愉快な感覚だった。

 

「おっ、始まったみたいだね。さぁ、復活させて、私の友達を」


「……クソ、がァァァァっ!」


 ここまで来ればわかる。

 お姉ちゃんは敵であると。

 それでも。


「はぁ……はぁ……はぁ……」


 僕は、何かをするようなこともせず、ただただお姉ちゃんのことを眺める。

 いきなり、お姉ちゃんが敵だと言われても、戦闘に移ることなんて出来なかった。


「……なんとか」


 そんな中で、僕は自分へと強引に埋め込まれた邪神の影響を抑えつけようと奮起してみる。


「あぐっ……がぁ……うぅ」


 だが、そんなものに意味はなかった。

 そもそもとして、どうやってやればいいのか。まるでその感覚を掴めなかった。

 

「……クソ」


 僕は、僕は、何をすれば……。


「ははは……」


 戦うのか、お姉ちゃんと。

 僕は。

 それが、正解だというのか……どう、しようか。


「……ッ」


 イスカリオテとお姉ちゃん。

 いきなり現れた二人の敵と、自分という存在そのものを揺らがせるような言葉の数々。

 それらを受け、僕は敵の前で無様にも膝をついて言葉を詰まらせていた。


「ハァァァァァっ!」


「おっと」


 そんな中で、誰よりも早くに動き出したのはリーミャたちだった。


「えっ?」


 リーミャとマリアが自分の近くにいたお姉ちゃんへと蹴りかかり、アイが僕の前にまで走って来て、何かしらの薬を注射で打ち込んでくる。


「さっさとHP治すわよ」


 そして、アリスが僕の削れていたHPを全快にまでもっていってくれる。


「な、何を……ッ」


「何を、じゃないわよ。貴方たちは私の仲間であるアークライトよ?敵っぽい貴方のお姉ちゃんの好き勝手にさせるわけないじゃないですか」


「えぇ、そうです。私たちが貴方のことを話すと思ったら大間違いです」


「その通りよ!」


「まったくですっ!」


「……みんな」


「貴方に打ち込んだのは己の内部にいる魔物を抑えるためのものです……どうでしょう?少しは楽になりましたか?」


「……なるほど。そういう類のものか」

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