第21話
「さて……どうしましょうか」
オーヘンス教の教会から出てきた僕とアリスはぶらぶらと特に意味もなく街を歩く。
「普通に帰れば良いんじゃないか……?」
「いえ、ダメよ。まだまだね……最低でも後3時間は戻らないわ」
「なぜ……?」
「あなたは知らなくていいことよ」
「なぜ……?」
「この世界には知ってはいけないものが多いからよ」
「いや、それには同意するが……家に帰ってはいけない理由くらい当人が知っていた方が良いのではないか?」
「ダメね」
「そっか……」
頑ななアリスは決して僕に家に帰ってはならない理由を教えてくれない。
彼女の態度を見るに、どれだけ今僕が粘っても教えてくれなそうだった。
「どこ行こうかしら……」
「まぁ、僕はアリスについていくよ」
「ありがと」
僕はどこに行くか迷い、ふらふらと歩き回るアリスのあとをついていく。
「おっ」
そんな中、僕はダンジョンへと入っていく一つの冒険者グループを見つけて声を上げる。
「ん?どした?」
唐突に声を上げた僕の方へとアリスは振り返り、口を開く。
「いや、何でもないよ」
アリスの言葉に対して軽く誤魔化し、ダンジョンの中へと入っていた一つのパーティーのことを思い出す。
とある学園の制服に身を包んだ一団、ゲームの主人公たちのパーティーを思い出す。
「……やっとか」
僕は小さな声でぼそりと呟く。
どうやらようやくゲームの本編が動き出したようだ。世界の英雄として活躍する主人公たちの物語が、ダンジョン内に渦巻く怨念と過去の遺恨を開放する主人公の物語が。
「まぁ……僕には関係ないけど」
とは言え、僕にはそんな話一切関係ない。
僕はゲーム本編にも出てこないモブであり、そのシナリオに僕が関わることはないだろう。
「よし!ちょっと早いけど、お昼にしましょうか!外食も良いわよね!」
「……お姉ちゃんに作ってね!って言われたんだけど」
「事情を話したらお姉ちゃんも納得してくれるわ!」
「そうだと良いけど……それで?外食のお金は自分で出すよね?」
「え?何言っているの?アークライトが払うに決まっているじゃない」
「は……?」
僕はさも当たり前かのように言ってくるアリスをにらみつけた。
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