第20話
ボロボロの教会……少しだけきれいになったような気もするオーヘンス教の教会に僕とアリスはやってきていた。
「よくぞお越しくださいました、アークライト様。うちの娘がお世話になっています」
「いえいえ、こちらこそお世話になっています。いつも、アリスさんの回復魔法にはひどく助かっております」
僕と神父さんは互いに笑みを浮かべ、言葉を交わし合う。
「それなら良かった……」
僕の言葉を聞いた神父さんは心の底からの声を漏らす……僕が教会へと入ったとき、神父さんがすべてを諦めたような顔をしていたから苦情の後に返還されると思ったのかな。
「自分の戦い方は少しだけイレギュラーですから。回復魔法が必須なのです。今ではアリスを手放すなんて考えられませんよ」
「そう言ってくれるのであればありがたい……うちの娘はお転婆もいいところで……」
「ちょっと!神父様!私だって成長しているのよ?私は最上位職の聖職者になり、その職業レベルもMaxまで上げたのだから!」
「最上位職のレベルMaxッ!?!?」
神父さんがアリスの言葉を聞いて驚愕し、目を見開く。
「えぇ、そうよ!私も今ではダンジョン探索の最上位パーティーの一人であり、世界有数の聖職者!三大宗教の大神官にだって負けないわ!」
「強さだけじゃなく、精神面の成長もお願いね?」
「ぐぬぅ!?後ろから刺された!」
僕の言葉にアリスが驚愕し、僕をにらみつける。
「はぁー」
そんなアリスの様子を見た神父さんが深々とため息を吐く。
「少しは精神面での成長も期待したのだが……」
「まぁ、人間。そんな短期間で変わりませんよ」
「そうであるようだな……」
「ぐぬぬ……ッ!」
共にアリスを馬鹿にする僕と神父さんを前にアリスは体を震わせ、頬を膨らませて僕たちをにらみつける。
「それで?一体何の用ですかな?」
「用なんてないわよ。ただ顔を見せに来ただけ。悪いかしら?」
拗ねてしまい、ツンケンとした態度で吐き捨てるアリス。
「いや……悪いなんてことはないとも」
そんなアリスに向かって神父さんは優しく語り掛ける。
「君が顔を見せてくれるだけで私としては嬉しいよ……出来れば精神面でも成長した姿を見せてほしいけどね」
「ふ、ふん!いちいちうるさいわ!言われなくともあっと驚かれるくらい成長してやるんだから!」
「えぇ……楽しみに待っているよ」
「行くわよ!アークライト」
アリスは足早に出口の方へと向かっていく。
「うん」
僕はアリスの言葉に頷き、彼女のあとを追う。
照れ隠しが下手だよね。アリス。
そんなことを思いながらほっこりしていると……。
「ん……?」
なんとなくの違和感を感じて僕は足を止め、後ろを振り返る。
「ふむ?何か……?」
「いや、何でもないです。お邪魔しました」
僕はその違和感を勘違いで終わらせ、さっさと出て行ってしまったアリスのあとを追った。
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