第19話

 アリスにされるがままの状態で庭からへと出てきた僕とアリス。


「靴取りにいかない?魔法を維持しているの大変なんだけど……」

 

 庭から外へ出たのだ。

 当然靴なんて履いているはずもなし。

 だから、僕がわざわざ靴を魔法で作って使っているのだ。


「良いじゃない。別に今困っているわけじゃないわけだし」


「僕が苦労しているんだけど……」

 

 魔法で靴を再現する……一見凄くないように見えるが、実際に使っている魔法は複雑かつ高度だ。

 まず土魔法で石を作って土台を作り、水魔法で色のついた水を産み出して氷魔法で凍らせて模様を作る。

 次に中が石だと固くて痛いため、痛くないように風魔法を使って中に絶妙の強さの風を産み出して歩く際のクッションとしている。

 まるで現代の靴で歩いているかのような履き心地を僕は産み出していた。


「別に私じゃないし、良いわ。というか、普通の靴よりも履き心地が良いわ。ちょっとこれから私のために毎回靴を用意してくれないかしら?」」


「いやだよ。面倒くさい。まぁ、正直に言うと僕はこれから自作の靴で行動することになるだろうけど」

 

 風魔法でここまでの履き心地を作れるとは僕もまったく思っていなかった。

 完全に自分の想定を軽く超えていた。

 今更、元の靴になんか戻れない。戻れるはずもない。


「泣くぞ?ここで」


「……その脅し辞めん?」

 

 マジの表情と声色で告げるアリスを見て僕は頬を引き攣らせながらぼそりと呟く。


「良いのか?」


「良いわけないだろ。これでもトップ冒険者として注目されているんだ。そんなことされたらたまらん……。良いよ。これからも作ってあげる」


「やりぃ!」

 

 僕の言葉を聞いたアリスがガッズポーズを取る。


「……なんでこんなことになったんだ。というか、なんで庭から、それもあそこまで慌てていたの?」


「え?……あぁ。うん。それはあなたが知らなくていいことだわ!」


「は?何それ……普通に気になるんだけど、教えてくれない?」


「無理ね!ほら!行くわよ!」

 

 僕の言葉に対してアリスが笑顔で断った後、走り出す。


「あ!ちょ!?待て!」

 

 僕は急に走り出したアリスの後を追いかけた。

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