第16話

「そろそろ戻るか……」

 

 この世界のダンジョンには転移機能なんて便利なものはない。

 帰るときも現在いる階層から一階層まで自力で上がらないといけないし、以前潜ったところからやり直し!と言って転移することも出来ない。

 再び一階層から潜っていく必要がある。

 

 転移魔法なんて伝説にもないような魔法だし、当然と言えば当然なのだが、ものすごい不便さを感じる。

 

 転移がないせいでダンジョンで宿泊しないといけないし、下に潜るにはかなりの時間ダンジョンで過ごす必要が出てくる。


「そうね……私たちはまだ本格的にダンジョンに潜る計画を立てているわけじゃないし、そろそろ戻るべきかもしれないわね」


「うちは戻ることに賛成!さっさと帰ってふかふかのベッドに眠りたいよ!」


「……ふかふかのベッドだぁー!って言って僕のベッドにダイブするの辞めて?汚いんだけど」


「き、汚い!?うちのような美少女を捕まえて汚いとは何事なの!?」


「ん?ちゃんと僕を見て?」


「ぐぬぬ……卑怯だぞ!いくら事実だとしても少しは謙遜しろや!」


「ブーメランだよ?」


「ん?それはつまり……う、うちが美少女だと認めたってこと!?」


「ん?あぁ、そうだよ。アリスは文句なしの美少女だよね」


「んなッ!?」

 

 ……ん?アリスは二次元のゲームだから全員の顔面偏差値が高いこの世界の中でも可愛い部類の子だろう。

 それを本人も自覚している……なのに今更僕に言われて頬を赤らめるの?


「二人でイチャイチャしないでください!私は帰還に賛成です。私はアースライト様に反対しませんから」

 

 僕とアリスの会話にアイが割り込んできて、帰還に賛成の意を示す。


「そうですね。私もご主人様に賛成ですよ」


「よし。全員からの賛成を確認。帰ろうか」


「……いちいち全員からの確認取る必要あるのかしら?これ」

 

 サクサクと決まったところを見てリーミャがぼそりと呟く。


「それでも他のメンバーからの意見は聞いておかないと。リーダーを止められる権限を他のメンバーが持っているっていうのは大事だよ?」


「まぁ、そうね……私が間違っていたわ。じゃあ、帰りましょうか。みんな、帰りも油断しないようにね。ダンジョンを出るまで危険はあり続ける……ね?アリス」


「ぎぐぅ!?」

 

 大きなあくびを浮かべ、明らかに油断しているであろうアリスはリーミャに睨まれて体を震わせた。

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