第15話

 ダンジョン第60階層。


「バフとデバフお願い!」

 

 僕は今まさに飛び立たんとするフレイムドラゴンの翼へと斬りかかる。

 別に空中戦も容易に出来るが、出来れば陸上で戦いたい。


「ガァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 飛びたとうとしたところを襲われ、片翼を大きく傷つけられたドラゴンは地に落ち……僕の方へとその相貌が向く。

 溜めはなく、発動は一瞬。

 大きく開かれたドラゴンの口が光り輝く。


「お願い!」

 

 ドラゴンの口から漏れ出るブレスは僕の身を守る結界に弾かれ、僕には届かない。


「そいや!」

 

 ブレスを突っ切り、ドラゴンの顔へと足をつけた僕は眼球へと刀を差し込み……抜き取る。


「よっと」

 

 僕は巨大なドラゴンの眼球をマリアへと投げ渡し、視界が閉ざされて無茶苦茶に暴れだすドラゴンを斬りつけ、共に踊る。

 もう一つの眼球はアイの放つ弓矢が既に貫いている。


「終わらせるよ、マリア」


「わかっています」

 

 マリアが血界能力を発動させる。

 彼女の好きなように性質を付与することが出来る雪がダンジョン内に降り始める。

 今回付与されている性質は遅延。

 ドラゴンの時の流れが遅くなり……動きが緩慢にになっていく。

 マリアの血界能力はチートだが、最強ではない。遅くなったと言ってもそこまで遅くなるわけじゃない。

 効果としてはほんの少し遅くなる程度。


「サポートよろしくね」


「後方の守りは任せて下さい」


「うん」


 だが、その少しはスピードタイプである僕と対決するうえで最悪となる。

 

「ほいほいほい」

 

 僕は縦横無尽に駆け巡り、刀を振るい、ドラゴンのHPを削っていく。

 手を振り上げれば手を斬り裂き、足を動かせば足を斬り裂き、ブレスを吐こうと口を開けば蹴りで閉じさせる。

 何もさせない。

 もはやドラゴンはただの大きな的だ。

 

 魔法が、弓矢が、様々な飛び道具が。

 ありとあらゆるものがドラゴンの体を叩き、削り取っていく。


「これで最後……『時雨』」


 刀の空気を斬り裂く音が消滅する。

 神速の一刀は対象以外のすべてに何の影響も与えず、すべてのエネルギーを対象へとぶつける。


「よし」

 

 HPを削るスキルの発動、圧倒的な火力がドラゴンへと襲い掛かり、その生涯に幕を下ろさせた。


「これで60階層突破だね」

 

 みんなでダンジョンに潜りだしてから早五日。

 僕たちは60階層を突破したのだった。

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