第9話

「なんでこんなことになっているんですかぁ!?リーミャさん!?」

 

 女の子の奴隷を買って帰ってきた僕とリーミャにアイが慌てて声を張り上げる。


「あぁ……ごめん。色々とあったんだよ……許して」

 

 そんなアイに対し、リーミャが少しだけ視線を逸らしながら謝罪の言葉を口にする。


「リーミャさぁん!!!」


 ……なんでアイはこんなにも僕が女の子の奴隷を買うのを嫌がるのだろうか?

 別に手を出したりはしないし、鬼畜じみたこともしないけどね、僕。


「実はね……」


「あぁ……なるほどね」


 僕がなんでこの子を約束を破ってまで買ったのか……その理由を話そうとしたその時、お姉ちゃんがすべてを納得したかのように頷く。


「この子、どうやら血界能力を持っているようね……それも、かなり強力な」


 僕はお姉ちゃんの言葉を聞いて固まる。

 なんで目も見えない……レベルも上がっていないお姉ちゃんがそんなことわかるのだろうか。


「なるほどね。この子を見たらそりゃ買いたくなっちゃうよね」


「……お姉ちゃん?」

 

 僕はさも当たり前のように話すお姉ちゃんに愕然とした視線を向ける。

 どういうことか。

 お姉ちゃんには僕と違い、相手とのパスを繋いでそのすべてを知る術を持っていない……少なくとも僕は知らない。


「ふふ。私だってすべてをアークライトにさらけ出しているわけじゃないのよ?女は秘密の数だけ美しくなるのよ」

 

 僕の愕然としたまなざしに対してお姉ちゃんは艶やかな笑みで返される。


「おー!なんか知らんけどかっこいい!」

 

 そんなお姉ちゃんを見てアリスが歓声を上げる。

 

「ふふん!」


 その歓声を受け、お姉ちゃんが嬉しそうに胸を張る。


「……ッ」

 

 僕は無意識のうちに下唇を噛む。


「血界能力……?本当ですか?」

 

「うん。本当だよ。この子は血界能力持ち……珍しいよね」


「珍しいとかいう次元じゃないと思うのですが、私が元居た組織でも見つけ出すことの出来なかった逸材なのですか……」


 そんなこと言ったら僕を育てたあの男ですら血界能力持ちの子をついぞ手に入れることが出来なかった。

 そんな人材だ。


「運が良かったよね……」


「そんな次元じゃないと思うんですけど……」


「よく考えてみてよ。リーダーは紫紺ノ狂人として恐れられる自殺志願者。アイは魔物とのハーフ。アリスは貧乏シスター。まともなのは私くらい……今更じゃない?」


「確かにそうかもしれないですね……血界能力持ちの奴隷がいたとしても違和感ないかもしれません……」

 

「それで納得するの?」

 

 僕は納得したように首を振るアリスを見て首を傾げた。

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