第8話

「え?え?え?」

 

 突然ダンジョン12階層へと連れてこられ、突然奴隷の少女から膨大な力があふれだし、突然見たこともない雪が降りだし、突然奴隷の少女が気絶する。

 何も理解出来ず、置いて行かれているリーミャは呆然と言葉を漏らす。


「よっと」

 

 気絶してしまったマリアを抱きあげ、リーミャの元へと戻る。


「えっと……その子に何をするつもりなの?」


「熟考の末に出てきた最初の一言がそれ?別にどうもしないよ。このまま家に連れ帰って休ませるだけだよ」

 

 僕は熟考の末にリーミャから出てきた疑問に答える。


「……あなただものね。そうよね……それで?どういう状況?いろいろと聞きたいことが、聞きたいことしかないのだけど」


「んー。簡単に言うと、この子にとって自分の血界能力はあまり良い記憶じゃない。使うのを恐怖し、忌避している。でもそれじゃあ僕的にはおいしくないから荒療治で矯正したってところかな?」


「……なるほど?あの白いのはその子の能力?」


「そうだよ。あれはこの子の血界能力によるものだよ……反則級の力だよ」

 

 出来ることは多岐に渡る。

 個人的にこの世界で最強の血界能力だと思う。


「それで?」


「え?他人の古傷を簡単に聞くような真似しちゃだめだよ?」


 かつて。

 マリアと言う少女はその圧倒的な力でありとあらゆるものをねじ伏せ……その結果、多くの人から化け物として恐れられ、多くの人を傷つけてしまった。

 それゆえに彼女は己を止められる、自分を化け物を扱いしない圧倒的な強者を求めている。

 それだけの話だ。

 しかし、化け物扱いに慣れている僕とは違い、マリアという小さな少女に化け物扱いは似合わない。


「……謎の力で全部知っているアークライトが言うの?」


「僕は良いんだよ。僕は。ふふふ……僕はこの子のご主人様だからね」

 

 ダンジョンを踏破して最強になる……その目的を達するための最高のパーティーメンバー。

 おそらく最後の一人。

 完成した自分のパーティーメンバーを前に僕は高揚する。


「……奴隷を得て笑い声を漏らすの辞めて」


「えー。せっかく奴隷を獲得してパーティーメンバーがそろったんだよ?そりゃテンションも上がるよ!」


「……ならせめて笑顔を浮かべて欲しいんだけど」


「いや、それは無理だよ……幼少期からの癖なんだよ。ほら、帰ろうか」


「……うん。わかった。帰ろうか」

 

 リーミャは僕の言葉に頷いた。

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