第5話

 オークション会場。

 人が人を身分の差で当たり前のように買い、己の欲望を満たしていく……そんな場所。

 前世

 だが、僕は既に前世のことは諦めた。

 ボロボロの姿で買われていく奴隷たちを僕は何の感傷もなく見過ごしていく。


「うーん。やっぱり高いわね……」

 

 僕の隣で売られている奴隷を当たり前のように値踏みしているリーミャがぼそりと呟く。


「うん。そうだね」

 

 僕はリーミャの言葉に頷く。

 今日、僕たちが求めている冒険者として共に戦ってくれそうな強そうな男たちはどれも高値で売られていく。

 オークションにかけられる奴隷なだけはあり、戦ってくれそうな人はどの人も歴戦の強者と言えそうな人たちだ。

 彼らには需要があるようで、全員僕たちの予算よりも高額な金額で落札されていく。

 ……ちょっと彼らに錬金術師と荷物持ちの職業を押し付けるのは難しそう……。


「ん……?」

 

 どの子を買うか。

 それを悩んでいた僕の視界にたった一人の少女が目に入る。

 次に……売りに出される少女だ。


「あの子が良い」


「……え?どの子?」

 

 僕の言葉を聞いた

 だがしかし、既にオークションは始まった。


「次の商品はこちらの少女です!ある程度の戦闘技術を持った未来ある少女にございます!」

 

 今オークション会場に立っているその子は明らかに高値で売買されるような……期待される少女ではない。

 高値で売れるようにその体を磨き上げた少女でも、武力に優れ、武器を持たされているわけでもない少女。

 たまに売りに出されていたそこそこの金額で売買される奴隷。


「最低金額は10万円から!」


「10万円」

 

 僕は迷うことなく手を上げ、声を張り上げる。


「え?なんで女の子を……?男の子にするって言ったよね?」

 

 入札に参加した僕に信じられないものを見るかのような目を向けてくるリーミャ。


「黙ってて」

 

 僕はそんなリーミャに有無を言わせない。

 

「おおーっと。最初の入札者は仮面を被った兄ちゃんだ!他に落札者は?」


「15万円」


「30万円」


「40万」


「80万円」

 

 僕は入札してくる人たちよりも二倍の金額を提示していく。


「おぉーっと。これはすさまじい勢いだァ!」

 

「……ふむ。200万」

 

 当たり前のように金額を吊り上げる僕を見て何かを感じ取ったのか、金持ちそうな爺さんが参加してくる。


「400万円」

 

「ちょ!?」


 そして、当然のように僕も立ち向かう。

 慌てているリーミャなんて無視だ。


「うむ……ふむ。500万」


「1000万」


「ふっ。ここは若人に譲るとしようかのぉ……どうせ儂には価値もわからん」


「凄まじい!こんな高額なつり合いになると誰が予想したでしょうか!?……他には、他にこの不可思議な仮面の兄ちゃんに声を上げるものはいるのか!?」


 他に声はもう、上がらない。


「1000万円で落札です!」

 

 僕は予算よりも遥かに高い金額で少女を落札したのだった。

 

 

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