第39話
状況としては最悪。
僕の最大火力をぶち込んでもなお倒せるのことの出来なかったサイクロプスが四ツ腕を振り回しており……僕は残りのHPが一割程度。
「……お姉ちゃんだけでも」
僕は懐に忍ばせている帰還石へと意識を向ける。
どんなダンジョンの階層からでもダンジョンの外へと戻ることの出来る優れもの。
魔物の前で使うことは出来ない代物ではあるが……僕がすべてを蹴散らしてきた廊下でなら使えるかもしれない。
「アークライト」
後ろにいるお姉ちゃんが僕の名前を呼ぶ。
「私は逃げないわよ?帰るときはあなたも一緒……私たちは共にある。だから、いつもどおり頼んだよ」
もう二度と開かれることのことないお姉ちゃんの両目が僕を捉え、突き刺す。
「あぁ。うん。そうだね……僕らしくないことを考えたよ。サクッと倒そうか」
僕は刀を持ち、元気にサイクロプスを睨みつける。
「実に良い。実に良いとも。その不屈の精神……どんな状況であれども一人で難敵に挑むその姿。称賛に値する。やはり君は私の最高傑作だッ!」
煩わしく喚き散らす男を無視し、僕はサイクロプスへと斬りかかる。
僕のHP残量は少なく、相手は僕の最大火力の攻撃を受けても無傷。
「ふふふ……ちょうど良いハンデだね」
僕は不敵な笑みを浮かべ、ゆっくりと歩き出す。
「ぬんッ!」
気合と共に振り下ろされるサイクロプスの拳を肌に滑らせるように回避し……刀も同様に添える。
僕の刀がサイクロプスの腕をそのまま斬り裂いていく。
「よっ」
僕はサイクロプスの腕を足場に跳躍。
宙を舞う僕に向けて振るわれる腕を回避し、顔のところまで僕は到達する。
「せい」
僕は圧倒的な存在感を放っている瞳へと刀を突き刺し、出血を誘う。
どうせ再生するだろう。
だが、一瞬でも視界を奪えれば十分だ。
「ぐらぁ!?」
醜く悲鳴を上げて体を振り回すサイクロプスの体を僕は駆け巡り……斬り刻む。
完璧なんて存在しない……再生能力にも欠陥があるはず。無限に再生出来るわけない……このままずっと相手の攻撃を避け、出血を強要させ続ければいつか……。
「ふぐっ!?」
衝撃が、走る。
「は?」
僕の腹に……サイクロプスのお腹より伸びてきた五つ目の腕が─────
「カハッ」
壁へと叩きつけられた僕の口から血が吹き出した。
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