第37話
「うん……大丈夫」
僕の言葉にお姉ちゃんは頷く。
「……アークライトなら絶対に助けに来てくれると信じていた」
「もちろん。僕はお姉ちゃんのためなら地球の裏側にまで助けに行ってみせるよ」
「ふふふ……それはシスコンすぎよ。それで?他の三人は大丈夫?」
「多分ね。冒険者ギルドに押し付けてきちゃった」
「ダメじゃない。お姉ちゃんのことを心配してくれているのは嬉しいけど……しっかりと仲間のことも考えてあげないと」
「ふふふ……君たちの姉弟愛は健在なようだ。このまま二人で結婚するとでも言いたげだな。まったく教育を間違えたかな?」
「……僕は貴様に教育を授けられた覚えなどない」
視線をお姉ちゃんに固定したまま僕は口を開き、毒を吐く。
「してやっただろう?……私の教育に、敵を前にして悠長に会話するなんてものはなかったはずだ。忘れたのか?敵も、疑わしい味方も、自分の敵になるかもしれない一般人も、すべて殺せと教え……経験させたではないか」
……。
…………。
僕は視線をお姉ちゃんから男の方へと持ち上げ、お姉ちゃんを己の手から離す。
「……そうだね。害虫はしっかりと駆除しなきゃ」
こんな男に生かしておく価値などない。
何があろうとも、許してはならないのだ。
ゆっくりと立ち上がった僕は刀を構え……一歩、足を引く。
「おぉ……怖い。今の君が相手ではあの日のように少しも対抗することなく殺されてしまう」
僕の言葉を聞いた男は体を震わせ……懐からとある水晶を取り出す。
「シッ!!!」
男に何かさせて良かったことなどない。
一切の迷いなく跳躍し、滑るように男の首を斬る─────
カンッ
甲高い音が響き、僕の手に握られている刀が天空を斬り裂く。
「結界……ッ!」
僕は己の目の前に立ちふさがる結界に歯噛みし、破壊したころにはすでに男が地面に水晶を叩き割った後だった。
「サイクロプス……また趣味の悪いものを」
壊れた水晶より溢れ出てくる大量の煙が一つの形を為す。
「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
普通のサイクロプスよりも二回り体が大きく、腕が本来の姿より二本ほど多い四つ腕のサイクロプスはすべての手に握られている四つの凶悪な短剣を振り回して雄たけびを上げる。
体から浮き出ている血管が今にも破裂しそうであった。
「ふー」
僕の目の前に立つ……不気味な気配を持つサイクロプスを前に僕は冷や汗を流した。
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