第36話
30階層のボスであるサイクロプス。
ボスである以上強敵なのは間違えないが、今の僕の敵ではない。
パーティーメンバーの三人に合わせてダンジョンに潜っていたため、 こんなところにまで潜っていなかった現状の僕の力だけで容易く50階層にまではソロで行けるのだ。
「終わり」
「ぐぁ?」
四肢を斬り落とし、地面に落ちてくるサイクロプスの首を落として終わり。
10秒も要らない。
ダンジョン30階層の守護者たる単眼の巨人は光となって消えていく。
「ふー」
僕は深く息を吐き……己の中の深くへと意識を落としていく。
「見つけた」
自分を覆うダンジョンの壁。
そこの一部の先にある空間を僕は探り当てる。
大地を蹴り、ダンジョンの壁を蹴り壊して僕は先へ先へと進んでいく。
ダンジョンの壁が開け、出てきた狭い一本道
「……僕の邪魔をするなよ、蛆虫どもがァ」
忌々しい。
なんて忌々しいことだろうか。
壁から湧き上がり、立ちふさがる仮面の男たちは害虫の如く僕にまとわりつき、粘着し、足を止めようと様々な手を使ってくる。
僕は己が前に立ちふさがる障壁をすべて破壊した僕は廊下を抜けた先に広がっていた広い空間へと出る。
そこにはお姉ちゃんをその手に掴む一人の男が立っていた。
「生きていやがったのか、お前……」
その相貌を泣いているようなピエロの仮面を被り、隠す背の高い男。
あの日、僕がお姉ちゃんと共に組織を抜け出した際に殺したはずの男。
「もちろん……生きているとも。志半ばで私が足を止めることはないとも」
僕の握る刀にはあの男を斬った感触が残り……確実にあの男の死体も泥にまみれて転がっていたはずだ。
しかし、結果は僕の前にある通り。
僕は殺し損ねたのだろう。
「無視か……まぁ、良い。それよりもよく来たね……まさかここまで成長しているとは思わなかったよ」
薄汚い口を開き、聞くに堪えない醜い声を発する男など無視し、僕は男に囚われていたお姉ちゃんを両腕に抱く。
「大丈夫?お姉ちゃん」
とある力で強引にお姉ちゃんを腕の中へと持ってきた僕はお姉ちゃんに微笑みかけた。
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