第34話

 家に轟音が響く。


「クッソがァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!」

 

 追いつかない。

 いや……追いつけ。

 地下より現れた誰かの気配、動き始める天井の奴と玄関の奴。

 最重要なのは、お姉ちゃんの無事。


「紫電・解放」

 

 僕は雷を纏い、壁をぶち破って風呂場まで直行する。


「お姉ちゃんッ!!!」

 

 地下より現れたであろう仮面を被った男にお姉ちゃんが掴まれていた。

 何故かは知らないが、お姉ちゃんだけが服を着て他の三人は裸のままだ。


「……ッ!?」

 

 僕が斬りかかろうとしたタイミングで天井が破壊され……天井の瓦礫が僕の上に降りかかってくる。

 ……爆弾じゃなくて素の拳かッ!?

 天井が破壊された要員を察した僕は自分の無警戒さ具合に歯噛みする。


「邪魔ァッ!!!」

 

 落ちてくる瓦礫をすべて斬り壊し、一歩前に出る───。


「ハァ!!!」

 

 しかし、それは邪魔される。動きを強制的に止めさせれる。

 僕へと向けられる天井を拳で破壊した仮面の男の鋭い拳で。


「っざけんな!?流水」

 

 スキルを発動し……腕を落とし、首を落とし、一瞬で人間をただの肉塊へと変えて見せる。

 僕が仮面の男を殺すのにかかった時間は1秒ほど……しかし、それでも時間は稼がれた。

 一秒もあれば十分だった。

 既にお姉ちゃんを捕まえていた仮面の男は既に跳躍し、崩れた天井の上に立っている。

 大丈夫だ……まだ間に合う。

 僕が大地を蹴った瞬間、風呂場へと玄関に居た仮面の男二人が入ってきて……お姉ちゃんが口を開く。


「三人を守ってッ!」

 

 僕は既に大地を蹴り、刀を構えていた。

 しかし、お姉ちゃんの言葉は僕の刀に迷いを生じさせた。

 その迷いは致命的となり……お姉ちゃんを抱えて逃げ出す仮面の男に刀が届かなかった。

 ほんのわずかな狂いを生じさせ、仮面の男にダメージを与えることが出来ても殺すことが出来なかった。

 HPも全損出来ていない……僕は宙に浮いており、逃げる仮面の男を追いかけるための推進力をすぐに産み出すことが出来ない。


「クソがッ!」

 

 僕は視線を下の方へと向け、今まさにアイへと襲い掛かろうとしていた仮面の男に向かって刀を投擲する。


「……ッ!」

 

 男を串刺しにした刀の上に着地した僕はそのままこぶしを握って残ったもう一人も殴り飛ばす。

 僕の手の平にHPを破壊し、頭蓋骨を陥没させた感触が残る……殺せたな。


「行くぞッ!」

 

 僕は裸のままの三人を掴み、跳躍。

 雷を纏い、最高速で大地を駆け抜ける。

 月明かりの下……僕は大地を駆け抜け、酒盛りで忙しい冒険者で賑わう冒険者ギルドの扉を蹴り開ける。


「依頼だッ!こいつらを守れ!」

 

 冒険者ギルドの床に三人を転がし、適当に体が隠れるように布を三枚投げ、依頼金としての金をぶちまける。

 金貨が冒険者ギルドを舞う中……僕は冒険者ギルドを後にし、その足をダンジョンの方へと向ける。


「今行くから……ッ!!!」

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