特別編
いつものようにお姉ちゃんと晩酌していた夜。
「ねぇねぇ!アークライト!」
「……ん?」
僕がワイングラスを傾け、良い感じに酔いを回していたとき、お姉ちゃんが僕の名前を呼び、体を揺らしてくる。
「なんか月が黒くなっていっているんだけど!?」
「ん?」
お姉ちゃんの言葉を聞いた僕は視線を上へと向ける。
確かに月は黒く陰っていた。
「今日は皆既月食の時期なのかな?」
前世でしっかりと義務教育を終え、高校で物理を選択して勉強していた何故月が欠けて行っているのか理解出来るが……そんな知識などないお姉ちゃんはまるでこの世の終わりかの如く騒いでいる。
「わわわ!?今度は月が赤くなった!?ね、ねぇ……アークライト、大丈夫なのかな?これ」
お姉ちゃんが僕を見つめる。
その視線には恐怖の色が込められている。
「安心してよ。ただの天体現象……驚くべきところなど何もない」
僕はお姉ちゃんを安心させるように口を開き、頷く。
「そうなのね。それなら良かったわ」
お姉ちゃんは僕の言葉に頷き、お姉ちゃんの体から恐怖が抜けていく。
「それにしても……赤い月は赤い月で良いものね」
「そうだね」
僕はお姉ちゃんの言葉に頷く。
まさかこの世界でここまできれいな皆既月食が見れるとは。
「今夜は月がきれいね」
「……っ」
僕はお姉ちゃんの口から漏れ出た言葉に驚愕する。
「ふっ……そうだね」
笑みを一つこぼし、僕はお姉ちゃんの言葉に頷く。
「うん。本当にそうだね……僕は死んでもいいよ」
一人、誰にも聞こえない声で……僕は己の独り言を舌の上で転がした。
■■■■■
ちなみに。
おそらく生涯で初めて見る赤き月を前にパニックになった民衆たちのせいで町は大変なことになっていた。
……中世ってここまで天体に関する知識なかったけ?歴史知らないからわかんないや。
というか皆既月食でそこそこの頻度で起こるよね?なんでこんなにパニックになっているんだろう。
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